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落下の解剖学のmikiのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

本作はクライムとかスリラーではなくて、ドラマじゃないの?と思った
ジャンルが上2つだったから、ミステリー系を想像して行ったんだけど、ほぼ子供のダニエルとサンドラの心情の描写と法廷劇で、特に謎解き要素はなかった
ダニエル役の子、演技すごい良かった
ナチュラルというか、いい意味で普通の子って感じがした
きっとカメラ外でもこのままで存在していそうな…

事実は一つしかないけど、解釈は解釈する人の数だけ存在していて、法廷は解釈ではなくて事実に基づいて運営されなければいけない
検察側が解釈に基づいてしか攻めてこないから、有能な弁護士を雇わないと簡単に社会的に死にそうと思ってしまった
あと普段英語がマジョリティの世界にしか触れないから、初めて英語がマイノリティになってる場面を見て新鮮だった

夫婦2人の口論を見てる時に
これ男女逆にしたら普通に日本のそこら中に転がってる話だよなってふと思ってしまった
サンドラ、夫が執筆できないから家事手伝ってくれ的なこと言っても、構わず書きなさいよ的なこと言っててドン引きしたんだけど、
自分が成功して家計を支えてるのをいいことにパートナーの負担とか、その負担によってパートナーの仕事がうまくいかないことなんか何も顧みないその姿勢、普通に男女逆転バージョンでよく聞く話だな…と思った
日本のそこら中でこんな話を聞くと、あまりにもありふれすぎてちょっと感覚が麻痺しているのか、酷いと思いつつどこか他人事のような気持ちになるんだけど、それは自分が被害を受ける割合が高い立場の性別だからなのかもと思った
今回女性であるサンドラが全く同じことをした時に、すごい新鮮な気持ちでドン引きしたし、改めて、パートナーにそんなことを言うなら結婚したり一緒に住む資格などないと思ってしまった
男性でも女性でも、人生を共にするパートナーに寄り添わないなら、パートナーになるべきじゃないよ
関係性は平等なパートナーであって、雇用契約ではないのだから
自分の金銭的余裕で相手を従わせたいなら、パートナーじゃなくてハウスキーパーの契約を結んだ方がいい

ただサンドラが家庭を顧みなかったのは事実だけど、夫と子供への気持ちが全くないかと言われればそんなことはなくて、夫の名誉のために鬱で薬を服用していたことと自殺未遂は言葉を選びたいって言ってたのは印象的だった
そういう夫への気持ちがあるのも事実だし…
夫の名誉のためには自殺って主張したくないけど、その主張をしないと自分がやってもない罪で有罪になるから仕方なく…っていうのも切ない話

ダニエルが、判断に迷ったら最後は自分で決めるしかないっていう真理に辿り着いたのもよかった
本当に、それが真理
最後は自分で決めるしかない、なんでも誰かが決めてくれたり、自明であるわけではないので…
ただ、自分の立場次第で母親の有罪か無罪かが変わるなんて、あまりにも酷な決断

邦題、シンプルに和訳してるだけなんだけどすごくいい
邦題はいつもこんな感じであってほしい

あと法廷でちょこちょこ出てきた皮肉にも笑っちゃった
私も大統領になる可能性が、、とか、スティーヴン・キングは大量殺人鬼なのか?とか、、、

さすがアカデミー賞()、レイトショーでもほぼ満員だった

2024年18本目
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