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落下の解剖学のbeachboss114のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
5.0
結局、いくら理詰めで解剖したところで真相なんて第三者には分かりゃしない、って話。

それを見事に証明してくださいました、2時間半もかけて。あーしんど。

裁判経験者にしか分からない、裁判官や検事(民事なら相手方弁護士)に特有の「所詮は他人事だからってんで、上から目線の嫌な感じ」がリアルに伝わってきて、暗澹たる気分に。本当に「お前ら何様やねん」と。

冒頭のBGMの実に不快な使い方から始まって、公正で神聖なはずの法廷で繰り広げられる集団イジメ、そこに無垢な子どもを立ち会わせる無神経さに至るまで、この映画で繰り広げられる「穏やかな暴力」と「清らかな偽善」は、まさに社会の縮図。作り手は観客をスッキリさせるつもりなんてサラサラない。「答え」を明確に出さない何かとズルくて巧い脚本に翻弄されっぱなし。モヤっとした時点で、まんまと術中にハマってしまいましたわ。

ちなみに、「勝ったところで何も得るものはない。ただ“終わった”という感覚だけ」という台詞も、これまた裁判経験者でなければ実感できない心境。
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