みどり

落下の解剖学のみどりのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

雪山で男が転落死した
第一発見者は視覚障がいのある息子
そして疑いの目は妻へと。

まわりが理解した気になっている部分ってほんの一部。
裁判で録音されていた音声が再生されてからはじめてこの夫婦の輪郭が見えてきた気がする
お互いに気持ちをぶつけるシーン、マリッジストーリーを思い出した


たぶんお互いに問題はある。
積み重ねてきたものはたくさん
人に知られたくない、言いたくないことなんて山ほどあるのに
録音されていた一部だけで分かった気になられるなんて不愉快

報道陣が実際殺したのかの有無ではなくて、小説家が殺したという事実のほうが世間的にはおもしろい。なんてことも言っていた

「私は殺してない」
に対して
「重要なのはそこではない。君がどう思われるかだ」と言った弁護士の言葉がここで重なる
もっとはっきりとした結末になると思っていたので見終わってなんともすっきりしない。
すべて終わり、疑いがはれたはずなのに。
これが妻の言う、裁判が終わってなにか見返りがあるような気がしていた、に繋がる気もするし…本当はどうなのだろう

妻が夫より稼いでいるという女性が成功したいい例でもあると思う。やりたいことも満足にできず、家事や育児に追われている夫、一方妻は仕事熱心だが家庭を顧みない。
音声のシーンだけに限定すればそう映るけれど実際はどこまでが本当かわからない。
バイセクシュアルだということが分かった途端、すべての人間が恋愛対象だと捉えられて一緒に話しているだけで誘っていると表現されること、地獄だった。
そしてフランスの裁判、言ったもの勝ち感がすごい。ある意味自由。
小説家でもある妻は堂々としていて落ち着いていて、淡々と話す。あまり揺らぎがないなと思っていたけれど、普段は英語を用いているのに慣れないフランス語で話させるあたりも見ていてフラストレーションがたまった


スヌープ役(わんちゃん)のメッシくんの素晴らしいお芝居に拍手。
みどり

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