ヤマ

落下の解剖学のヤマのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
人里離れた雪山の山荘で男が転落死する。発見したのは視覚障がいを持つ11歳の息子。次第にベストセラー作家の妻に殺人容疑が向けられ、法廷で夫婦の秘密や嘘が露わになっていく。カンヌ国際映画祭パルムドール、第96回アカデミー賞脚本賞受賞。

夫はどのようにして死んだのか。しかし冒頭で投げかけられた謎は解明していく気配を見せない。明らかになるのは事件の真相ではなく、妻サンドラと亡き夫のつまびらかな夫婦関係や私生活。夫婦関係はどのようにして破綻したのか。法廷での暴露…ある意味有罪判決よりキツいかもしれない。

言葉や言語の壁、フィクションと現実の境界線、真実よりもどう映るか。夫婦関係のサスペンスに託して、劇中ではそもそもの人間同士の分かり合えなさや、すれ違いの根源が示唆される。予断を持たない息子ダニエルや愛犬スヌープの存在に、せめてもの救いや希望を見出したくもなる。
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