ヤマ

オッペンハイマーのヤマのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦下のアメリカ。極秘プロジェクト「マンハッタン計画」に参加した物理学者J・ロバート・オッペンハイマーは、科学者たちを率いて世界初の原子爆弾の開発に成功する。第96回アカデミー賞作品賞ほか計7部門で受賞。

正直ついていくのに精一杯だった印象。たくさんの登場人物とシャッフルされた異なる時間軸の話で、しかも3時間。もう一度観たらその複雑さの中に醍醐味を感じ取れるだろうか。ミクロ世界の抽象的描写やトリニティ実験の溢れる緊迫感など、音や映像表現はさすがに見事なクオリティ。

人類に火を与えたプロメテウスになぞらえられるオッペンハイマーはしかし、間違いを犯し弱さを持つひとりの人間として罪悪感や苦悩に苛まれていく。もちろんそれは人類史における悲劇のひとつの側面に過ぎず、原爆投下の惨状や核の脅威は本作で語り尽くされるものではない。反戦反核はあくまでも婉曲的なかたちで示される。映画が真に描こうとしたのは、神ではない存在が創造者となることの罪や業の深さであったように思う。
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