ヤマ

アイアンクローのヤマのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.5
かつてプロレスで“鉄の爪=アイアンクロー”を生み出し、一世を風靡したフリッツ・フォン・エリック。1980年代、フリッツの4人の息子はレスラーとなりプロレス界の頂点を目指す。

俳優たちの鍛え上げられた肉体や真に迫るファイトシーン。しかし裏側から見たプロレスの世界に高揚感やカタルシスはもたらされない。描かれるのは「呪われた一家」と呼ばれる家族の悲劇や葛藤のドラマであることが次第に鮮明になっていく。

独善的な家父長主義が兄弟を縛る呪いとなる。監督はそれを「極端に歪められた男らしさ」と語る。じつは父親のフリッツそのひとこそ呪いに最も囚われた悲しい人物なのかもしれない。エピローグではフォン・エリック家の2009年WWE殿堂入りが言及される。栄光がもたらした影を思うと複雑な感慨を覚えるものでもある。
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