ももいろりんご

枯れ葉のももいろりんごのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.2
近頃、話題のアキ・カウリスマキ監督の最新作。
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先日「初めてのファスビンダー」レビューをあげましたが、ファスビンダー作品のレビューには「カウリスマキに似た系統(でもファスビンダーの方が先)」と紹介されてる方が多くある。似てるの?どちらも初めて知る監督さんだったんですよね。それぞれ1作品ではまだまだ…もう少し知りたいです。
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ヘルシンキの街でスーパーで働くアンサ。働いた分しか賃金を貰えない悪い労働条件な上、理不尽な理由で解雇される。ある夜、友人と出かけたカラオケバーで、やはり友人ときていたホラッパと出会う。お互い名を聞くこともなく別れるが、2人はまた出会い、やっと次に会う約束をするのだが…。
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アンサとホラッパがつけるラジオから、時代はまさに今現在だとわかる。でもSNSやメールで連絡を取り合ったりしない。紙に書いた電話番号を渡すアンサ。それを失くすホラッパ。
会えそうで会えない2人を、自ずと応援、期待してしまう。
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出会いの前後では、彼らの孤独をとても感じる。2人の仕事と収入は不安定で、生活は苦しそう。アンサがホラッパを夕食に誘い、準備のためにお皿とカトラリーを1セット買い足す。彼女の孤独を垣間みる。
ホラッパがね。これまたダメ男なんだよ〜。そんな男は願い下げだと毅然と伝えるアンサ。図星刺されてキレるホラッパ。どうする?ホラッパ!
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今までもブルーワーカーを中心とした世の中の市井の人を描いているというこの監督、その作品の特徴は最低限の会話と最小限の表情。尻切れトンボのようなセリフに若干の居心地悪さを感じるのに、大げさなフリや表情もないから、こざっぱりした独特のテンポがある。そしてどこかユーモラス。
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デートで映画に出かけ、アンサに「選んで」と言われた直後のスクリーン。「デッド・ドント・ダイ」。「ダメやろ」と私は呟いたし、カラオケのおじさんがシューベルトの「セレナーデ」を選曲して吹き出しそうになるし。(しかももちろん上手い!)
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音楽の使い方と選曲が自由でいい。どれも好き。バンドの女性が歌う「SYNTYNYT SURUUN, PUETTU PETTYMYKSIN」(悲しみに生まれ、失望を身にまとう)がとても印象的だった。
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少ない登場人物の2人の友人も重要!
北欧繋がり?で「ジャンヌ・ディエルマン〜」の潔さにも通じる気もした。
ちなみにアンサは「トーベ」の女優さんでした。
いくつもの回り道を経てお互いに惹かれ合っていく2人のシンプルなラブストーリー。