あんびー

枯れ葉のあんびーのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
新年映画初めに観ようと年末から決めてたけど、1本目にしてカウリスマキの中で1番好きな作品だった。

前作の「希望の彼方」は引退宣言もあって当時の政治的なメッセージも含まれていたけど、今回はちょうど「パラダイスの夕暮れ」あたりのわかりやすいストーリーに加えて、随所に表れる色使いのセンスが抜群に優れていて、意識してるのかわからないけど音楽の使い方もすごく上手い。相変わらず淡々と無表情で紡がれるシナリオの合間にふと訪れる気持ちが揺れ動く瞬間を目線で語るあの表情が堪らない。初デート後の映画館前でのやり取りは、不器用ながら暖かさをじんわり感じられる素晴らしいシーンだった。

アンサもホラッパも実生活は徐々に落ちぶれていってはいるし、ラジオから流れるウクライナ侵攻のニュースに嫌でも現実に引き戻される。
それでも、アンサが飼い犬に付けた名前を思い出すと、カウリスマキが見ている世界はまだ喜劇なのかもしれない、そしてこれからの作品をもう少し期待してもいいのかもしれないという期待を抱かせてくれた。
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