Mikiyoshi1986

枯れ葉のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
WW2以降「民主主義国家でありながらもロシアには絶対服従!」という理不尽極まりない"フィンランド化"の下に、それはそれは長い間、旧ソ連・ロシアにとことん虐め抜かれてきたフィンランド。

しかし、2023年。
ウクライナ侵攻を機にフィンランドは完全にロシアと袂を分かち、
一方フィンランドを代表する名匠アキ・カウリスマキ監督はかつての引退宣言を急遽撤回!
彼はフィンランド人としての矜持、そしてロシアの非道に対する圧倒的な憤怒を原動力に、再びスクリーンに戻ってきたのです。

彼を表舞台に引きずり出してまで描かせたこの中年版「ボーイ・ミーツ・ガール」はある種の愛しさと、この上ない哀愁を纏いながら、
まさに現代プロレタリアート作品をエンターテイメントとして昇華。

それでいて彼の溢れんばかりの映画愛もそこかしこに散りばめられ、長年に渡る盟友ジャームッシュとの絆はもちろん、前年にこの世を去ったゴダールへの哀悼の念にはこちらも自然と想いを馳せずにはいられませんでした。

あと映画初デートのくだりは、ふと「男はつらいよ(20作目)寅次郎頑張れ!」を想起。

戦争という暴力や不穏な現代社会に対し、あくまで"映画"という手法で以てラブストーリーで抵抗するカウリスマキは、未だ現役にして最高のアルチザンの一人なのだと改めて感じました。
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