チェさん

枯れ葉のチェさんのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
「その犬の名前は?」
「あるわ、チャップリン」

大傑作。全部が好きすぎる。
奇しくも一昨日見た『夜明けのすべて』に続き、日常を切り取った映画ではあるが、その描き方はまるで違った。
諦めムードの漂う、どんよりとした日常の中にふと、ありきたりに始まるメロドラマ。
恋愛映画!ってほどドラマチックではないし、ありきたりすぎて逆にそんなことある??みたいな残念な出来事もたくさんあって、そんな中急速に燃え上がる恋って訳でもなく、やっぱりありきたりな、でもたしかな恋愛模様があった。
でも、これが愛だよなあって心から思える。

ウクライナのロシア侵攻がラジオから常に流れ、職も失い、残念すぎる日常は先が見えてるとも言えるし、逆に全く見えなくて絶望とも言えるような。
そんな日常に、音楽だけがドラマ性を与えていた。
仕事場の音はどれもあえてなのか気持ち悪く、冒頭のスーパーのレジとか工事現場のセメントとか嫌な耳障りの中に、劇的に挿入されたBGMが最高すぎた。日常のありふれているけど、心がちょっと動くような場面ではあからさまに劇的な演出になるのも、ある種リアルな演出だと思った。ありきたりな恋愛だって、恋に落ちた瞬間はなんだかとんでもないドラマが始まった気がするもの。
また、ところどころ街の広いカットがとても意図的に挿入されていた気がして、そこは『夜明けのすべて』と似ていた。どちらも、街のカットが痺れるほどに効いていた。山椒は小粒でもびりりと辛いすぎる。
そして、最後まで残念な日常は、ラストで完全に救われる。犬の名前は、チャップリン。
全部、喜劇になるんだね。愛って素晴らしい。
なんかずっと残念なのに、くすっと笑えて、心も温かくなって、最後には全部肯定されるような、まさに人生!って感じの映画。僕の人生感の行き着くところを先立って教えてくれた、そんな映画。
チェさん

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