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枯れ葉のSPNminacoのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
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ラジオのニュウス以前にのっけからバリバリ現代!を感じた。86年の『パラダイスの夕暮れ』とよく似てるからこそ違いが目につく。
女性側を主人公にして、『愛しのタチアナ』みたいにさりげなくカッコよく技能を見せるのも女、デートでは盟友ジャームッシュのゾンビ映画をちゃんと観て、バンドはガールズバンド(Maustetytot良い!)に。労働者の暮らしは相変わらず厳しいのだが、職場で連帯する女性たちにグッとくる。
フィンランドのライアン・ゴズリング&ミシェル・ウィリアムズと呼びたくなるような(いやその組み合わせはバッドエンドだが…)、アルマ・ポウスティとユッシ・ヴァタネンもとてもフレッシュだ。とりわけ『トーべ』でも素敵だったアルマの、カウリスマキ映画らしいクールで骨太なハードボイルドみ。あのぎこちないウィンク!(何故だか、そこでウィンクすると思ってた)
女が選んだシャンパンの泡が弾ける音、呆気なく飲み干す男。男は同じ壊れた鋳型で出来てるとしても、変わることはできるし、大事なことをちゃんと言葉にするのは一味違う。どうもカウリスマキ史上最も柔らかいというか、苦味より甘み増し増しである。例えるなら、深煎りブラックコーヒーがキャラメルマキアートになったくらいの。それは今があまりに殺伐と暗すぎて、より優しさが必要とされる、尚更優しくありたい時代だからなんだろうね。
但し、古典メロドラマ『めぐり逢い』や『街の灯』をなぞったロマンス映画のスタイルは、てらいもなく古めかしい。でも毎度使われる懐メロソングと同じように、繰り返すことでむしろ古びることなく正統派の強度を持って、今の時代にも真っ当で切実な灯りとなるのだった。
赤は小津オマージュなのかな、でもそれ以上に目立つ赤。もちろんカラオケ上手の同僚(渋いイケオヤジ)から看護士まで愛すべき魅力。わんこのかわいさもカウリスマキ映画で随一ではないかしら。ところで、レンチンして捨てちゃった食事、あれは何がダメだったんだろ?
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