嶽花征樹

関心領域の嶽花征樹のネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

独特の存在感があり、A24作品ならではの尖った作品でした。直接的な残酷表現がなく、不穏な音響と共に淡々と進む物語で、人を選ぶかと思います。意外で劇的な展開を期待してると肩透かしをくらうかもしれません。

この独特のポスター以外の前情報なしで見たほうが、楽しめる作品ではないでしょうか。自分は事前に概要を知ってから見に行ったので多少衝撃度が薄まったのは否めなかった感じですね。見てるうちに状況を把握するのが一番おもしろい鑑賞方法だと思います(とはいえ今の時代、これがアウシュビッシュを扱っているという事すら知らずに見に行くのは至難の業でしょうけれど)。

とにかく不協和音の使い方が独特で、見る人を安心させるつもりは一切ないと言わんばかりの真っ暗な中での導入がインパクト大。音で”見せる”という意思表明に思えます。

日常茶飯事のように銃声が鳴ってたり、釜の説明をしたあとで煙があがってたり、と壁の向こうの惨状に対する無関心さを描きつつも、ときおり白黒反転したかのような独特な画作り(パンフレットもこの場面をうまく用いていてモノとしての作りが良かったですね)が不穏さを積み重ね、そしてラストに訪れる現在の博物館の靴、靴、靴。

イヌや赤ん坊は泣きわめき、おばあさんは逃げてしまうものの、その他の人々は何食わぬ顔。そしてこれを見ている我々の顔も。

登場人物を極端な悪人として描いてないがゆえに、壁の向こうとこちら側の境目は何なのかを考えさせられる。そんな静けさと騒がしさを併せ持つ衝撃作でした。
嶽花征樹

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