こなつ

愛にイナズマのこなつのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
3.8
「この出会い、一億ボルト」このキャッチフレーズにポスターの二人。バリバリの恋愛物語だと思っていた。
石井裕也さんのオリジナル脚本は、自分の夢や家族の愛についてリアルに鋭く語っている。幼い時母親を亡くし、父親に男手ひとつで育てられたという石井裕也監督。自主制作から始め映画監督の夢を追い続けた石井監督の姿が、主人公花子(松岡茉優)と重なった。

松岡茉優さんを初めて知った朝ドラ「あまちゃん」から10年。今や素敵な大人の女優に成長したが、あの10代の時の輝きがちっとも色褪せていないと今回久しぶりにじっくり演技を観て、その魅力に触れた。キレた松岡茉優が異常に可愛い。

ボクシングの世界チャンピオンの役を難なくこなす窪田正孝が、この作品では吹けば飛ぶような弱々しい、線の薄い正夫を好演。

業界って本当にこんな感じ?
監督としての夢を追いかけていた花子(松岡茉優)は、プロデューサー(MEGUMI)や助監督(三浦貴大)の心無いやり方で折角のチャンスを失う。そんな彼女を支えたのが、運命的な出会いをした空気の読めない男・正夫(窪田正孝)だった。そして彼女が最後に頼ったのは、ずっと疎遠だった故郷の家族たち。父・治(佐藤浩市)と兄二人。そこで明かされていく父の過去の真相。長男誠一役の池松壮亮は、石井作品の常連。次男・雄二に若葉竜也。今回出番は少ないが存在感のある演技が光った仲野太賀。若葉も仲野も石井作品の「生きちゃった」からの流れなのか、石井ファミリーの絆は強いと感じる。

豪華キャストが紡ぐ家族への思い。「消えた女」というタイトルで、幼い時蒸発した母親の話を映画にしようとしていた花子だったが、タイトルを「消えない男」に変えると言い出した時は、彼女の父への思いに胸が熱くなった。いなくなって初めて感じる大切な人への愛を感じた。

仲野太賀の父親の中野英雄さんが出てきた時はビックリ。同じ場面での共演はなかったですが、取り敢えず親子共演したんですね。

エレファントカシヤマの「ココロのままに」の主題歌の歌詞が作品にピッタリで、力強い応援歌が懐かしく心に刺さってしまった。
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