思ったよりずっとウェットで、ずっとずっと家族の話だった。
不要で意味のないシーンをカットするのではなく、カメラを向けた結果漏れ出る役者の真実を“なかったことに”しない映画。
メディア業界のセクハラにパワハラ、やりがい搾取を飲み込むのをやめるという意味では「エルピス」的な匂いもしたし、口の悪いキャラクターを包み込む天使のような窪田正孝という意味では「マイブロークンマリコ」を連想したりもした。
メインはもちろん、端役と呼んでいい高良健吾に電話越しの声で登場の鶴見辰吾など、さすが俳優に信頼される監督だなと思わせる豪華なキャスティングもあり、退屈はしないし笑えて泣けるのは確かではある。映画全体のメッセージを逆手に取っての“隠しゃあいいんだよ”は正直めちゃ笑ったけれど。
結果現れるその人の本質が薄くてグロい家族愛に帰着したり、拳を振り上げたその先が映画には向かず“諦めないよ”に終始したり、個々のシーンの面白さが全体としての完成度に寄与はしていないと思った。
三浦貴大よろしく「そんな人います？」って言いたくなる露悪的なキャラクターがたくさんでてくるけど、わざわざこのトーンの中で出すんだからあれが実態なんだろうなとも。
