oguchi

愛にイナズマのoguchiのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.6
人は誰もが本音を隠して生きている。
国や社会も都合の悪い情報は隠蔽し、真実でさえ隠すこともあるだろう。

コロナの世界で、人はマスクで顔を隠すことになった。人の気持ちがより分かりづらくなった。表情がバレずに嘘もつきやすくなったかもしれない。

「何でも隠せば大丈夫」(なのか?)

そんな中、嘘を許せず、真っ直ぐに生きようとする松岡茉優と、彼女のことを真っ直ぐに想い続ける天使のような窪田正孝の2人。そして、長男の池松壮亮と次男の若葉竜也、父親役の佐藤浩市。この5人が一堂に会する場面は圧巻で、台詞と芝居のセンスが素晴らしい抱腹絶倒の名シーンだ。
 
石井裕也監督は近年の作品群にも通じる「生きづらい世界」と「言葉」をテーマに据えつつ、ある家族のポジティブな希望と現在の社会への皮肉を時に切実に時にユーモラスに描く。

主人公や家族を取り巻く人々(MEGUMI、三浦貴大、趣里、高良健吾、役者たちは魅力的)の描き方がやや極端に露悪的だが、これも社会や世間に屈しようとしない主人公たちの信念を際立たせるファクターとなっていて良し。

リアリズムとエンターテイメントのバランスが絶妙な家族ドラマの傑作。
oguchi

oguchi