Hiroki

愛にイナズマのHirokiのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.5
「人間という存在の美しさを描こうよりも、ムカつくという気持ちの方が原動力としては強い」という監督のインタビューでの言葉がとても好きで信頼できると感じた。個人的な感覚としても、世の中には美しさよりもムカつくということの方が多い。人間という存在の美しさ、この世界の美しさは確かに存在するけれど、それは世の中にはムカつくこと=嘘の方が遥かに多くて、それに覆われてしまっているからこそ、美しさ=真実が一層輝いているのだと理解した(もちろん嘘と真実は素朴に二つに分けられるものではないけどそれでも)。その怒りを体現するように松岡茉優がまあキレるキレる。安藤サクラと通底するものを感じました。

2人の出会いのシーンがあまりにもロマンチック。セリフ、演技、画力全部が神がかっていた。

なんでこの時、この人はこんなことしたんですか?こんなこと言ったんですか?理由はなんですか?若いですねーもっと人間のこと勉強してくださいという助監督に対して、理由はない、突拍子もないことは起こる、私は実際に見たという下りがすき。これは石井監督がやりがちな、クサいセリフ、演出に対するリアリティがない、嘘くさいでしょという批判への自己弁護なのだと思った。自分は石井監督のクサいセリフ、演出に対して大好きだけど、嘘くさいというどちらの感情も持っていたけど、この自己弁護を聞いて妙に納得してしまった。松岡茉優や濱田正孝みたいに馬鹿正直に生きてクサいセリフを平気で言う人も確かに存在するし、そうした人が大好きなことを思い出した。
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