スカポンタンバイク

タイタニックのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
3.4
「船が沈むだけで3時間?うわぁ」という舐めた態度で臨んだが、思いのほか面白かった。まぁでも、長いなとは思ったけれど。

結局、この上映時間というのはタイタニックでの乗客のお祭り騒ぎを見せて、乗客たちに感情移入させるためのセットアップで前半1時間半使うためなのだと思うが、そこは基本レオ様とウィンスレット嬢のラブストーリーがメインなので、群像劇的に多くのキャラクターに感情移入するみたいには機能していなかったと感じた。まぁでも、レオ様とウィンスレット嬢のイチャイチャを観てるだけでも、それなりに楽しくはあった。タップダンスシーンはとても良かった。
そして、なんといっても後半。船が沈んでいくシーンは、こればかりはケチのつけようがない。傾いてく船、割れる船、垂直立ちする船、なだれ落ちる乗客がこれでもかという大スケールで見せられる。また、助からないことを悟った音楽隊が最後まで演奏し続ける所は、もっとグイグイ泣かせ演出キメテくれてもよいだろうとは思ったものの、とても感動的だった。
個人的一番のお気に入りシーンも後半で、レオ様の手錠をウィンスレット嬢が斧で破壊するシーン。「うっかり腕切断されたらどうしよう」と不安がるレオ様を見て、ヒヤヒヤしながらゲラゲラ笑った。

ただ、個人的にはキャルの扱いには引っかかる。彼はやり方こそ強引なれど、実は「彼女の心がほしい・知りたい」というプラトニックな男なのだ。キャル側はお金には困ってないので、その手の裏事情は彼にはないのだ。だからこそ、彼女を先に船に乗せることをレオ様と協力したというのは、真実の愛なのだ。それがその後、レオ様とウィンスレット嬢のイチャイチャを見て、銃をぶっ放すってのは「どうなの?」と思ってしまった。その前から、完全に脈なしなの分かりきってたじゃん。これは、主役2人のラブロマンスを盛り上げ、正当化するための悪役化としか思えなかった。私は漫画とかのハーレムラブコメでも、作為的に悪人の役回りを別ヒロインにやらせるみたいなのは許せない人間なので、ここは複雑な心境だった。まぁビリー・ゼインが初出から嫌な男の演技が上手かったのもあって、そのヤダみはまだ少くはあった。
この辺を勧善懲悪的に持ってく感じは、「あー、キャメロン映画を観てるなぁ」という気持ちにさせられた。あと、この銃ぶっ放してからの話は、自分たちから危険地帯へ飛び込んでいくアクション映画になってしまうので、「それは、避けられない沈没を擬似体験させる映画としては、方向性違うんじゃないか?」と思ってしまった。その後、扉の鍵が開かなくて溺れそうになるのも、自業自得な感じがしてしまう。未公開シーンでキャルの執事が追ってくる「ダイニングルームでの格闘」というのがあったから、もしかするとそこをカットして、整合性が取れなくなったのかなぁとは思った。でも、そもそもコンセプトとズレてる感は否めない。

結論としては、かなり楽しんだのだけど、やっぱりもっとタイトにした方が良くなるような感じは否めない映画という感じでした。一番には、現代のトレジャーハンターたちのくだりはいらないと思う。