なお

グランツーリスモのなおのネタバレレビュー・内容・結末

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

日本発・世界一のレーシング・シミュレーションゲームがついに映画化!

「ゲーマー」から「レーサー」に。
一件無茶とも思える理想を現実にするため、全てを賭けた者たちがいた。
今もレーシングドライバーとして活躍する、ヤン・マーデンボローの青年期における史実をベースとしたドキュメンタリー的作品。

✏️父の背中
自分の父親はテレビゲーム好きで、自分が初めて触ったゲーム機は「セガサターン」だったし、セガサターンの「セガラリーチャンピオンシップ」を遊んだこともあった。

その影響で自分もゲーム好きになって、最初のうちは対戦プレイで全く勝てなかった父にも少しずつ勝てるようになり、いつしか勝つのが当たり前になっていった。

しかしそんな自分でも、最後まで父に勝てなかったゲームがある。
それこそがこの「グランツーリスモ」だった。
(あと「みんなのゴルフ」)

それもそのはず、このグランツーリスモはとことんに「リアリティ」を追及したレースゲーム。
みどりのコウラもダッシュキノコも登場しない、ただただ「己の腕」だけが容赦なく試されるレースゲームで、父に勝てるはずがなかったのだ。

そんな自分の回顧録はさておいて。
リアリティを追及し尽くし、クルマのデザインやパーツひとつひとつ、また実在するコースの細部に至るまで完全再現してやろうという、ある種の日本人の「変態性」と、「ゲーマーをレーサーにしてやろうぜ」という海外の人ならではの思い切った発想から生まれたヤン・マーデンボローというひとりのレーシングドライバーの活躍を、本作では見事に描き切っている。

ヤンがゲーマーから一流のレーサーになるまでに歩んだ道筋は実に「王道」。
ゲーマーからレーサーになり、一度は成功を収めるも挫折、そしてその逆境からのカムバック…
このストーリーをオリジナル映画の企画として上司に提案したらブチギレられそうなくらい「王道」。

普通の映画なら非難の対象になりそうな王道すぎるストーリーだが、我々はこれを受け入れるしかない。
だってこれは「事実」なのだから。

プロサッカー選手として活躍した父の存在と、その偉大すぎる背中に引け目を感じながらも、ただひたむきに自らの夢を追い続けたヤン。
ゲームばかりしてるんじゃないぞ、となかなか息子を認めようとしなかった父がル・マンの現地に応援に来たシーンでは思わず目頭が熱くなった。

そして本作では、ヤンにもう一人の”父親”の存在があった。
それこそがデヴィッド・ハーバー演じるジャック・ソルターである。

どこかアウトローさを醸し出しつつも、アカデミーに集う生徒たちのレーサーとしての器量を見抜く慧眼を持つジャックという人物は、デヴィッド・ハーバーにとってはこれ以上ないハマリ役。

ちょっと自分には、実の親子以上にジャックとヤンが「本当の父と息子」の関係性に見えましたね。

レースシーンの臨場感と迫力は言わずもがな。
時間と金をケチったことを後悔するほど音響技術が優れている。
また単純にクルマ同士のレースを描くのではなく、そのレースシーンをより一層アツくする演出がふんだんに盛り込まれていたのがよかった。

ゲーム未プレイの方でも、思わず作品世界の魅力に没頭できること間違いなし。

☑️まとめ
父と子の人間ドラマ、そしてそれを引き立てる轟音と歓声が鳴り響くレースシーンの見事なコラボレーション。

正直そこまで期待値を上げてなかったこともあったけれど、先に書いた昔の父と子の思い出とか、そういったことも思い出させてくれる良い映画でした。

ちなみに、日本国内にもグランツーリスモをきっかけにプロレーサーとしてデビューした冨林勇佑選手という方が存在する。

以前某テレビ番組に出演されており、彼がプロレーサーを目指すきっかけになったのは「グランツーリスモで大人(当時のプロレーサー)にボコボコにされたのが悔しかったから」だそう。

やはり人を突き動かす大きな原動力というのは、「夢」そして「コンプレックス」なのかもしれない…

<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★★★
🥲感 動:★★★★☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★★☆

🎬2023年鑑賞数:90(42)
※カッコ内は劇場鑑賞数
なお

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