紅梅シュプレヒコール

グランツーリスモの紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.2
カーレースゲームの世界的ヒット作『グランツーリスモ』を題材に、『第9地区』『エリジウム』で知られるニール・ブロムカンプ監督が実在のレーサー、ヤン・マーデンボローの半生を描いた今作

ニール・ブロムカンプの過去作のイメージからは離れた真っ当な王道物語となっており、彼のクリエイターとしての器用さを垣間見ることが出来る傑作でした

本作は、ゲーマーの青年ヤンが新たに創設された"GTアカデミー"の生徒に選抜されることから物語は動き出し、最も過酷なレースであるル・マンへの参戦までを描いています

今ではプロゲーマーやストリーマーなどの職業が生まれ、一般に受け入れられているゲームですが、GTアカデミーが始まった2011年はまだ遊びの延長でしかなかったと思います(EVOなどの大会はありましたが)

当時の雰囲気を想像すると、ヤンはもちろんながらGTアカデミーのプロジェクトに関わった全ての人の未来を見据えたビジョンと努力は凄いなと感嘆させられます

そんなプロゲーマーがプロレーサーになるという(今でも)荒唐無稽なように思えるサクセスストーリーを見事映像化したニール・ブロムカンプ

実際のゲーム画面を再現したレースシーンや仮想と現実をミックスさせた表現など監督の映像センスが光っています

多彩なカメラワークを用いて描かれるレースシーンも見応えがあるものに仕上がっており、総合的に満足度の高い作品に仕上がっていました

ただ、あえて文句を付けるならば中途半端な恋愛要素がテンポの邪魔になってしまっていたのは残念でした