ヤマ

瞳をとじてのヤマのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
映画『別れのまなざし』撮影中に主演俳優のフリオ・アレナスが失踪する。22年後、元監督のミゲルは失踪事件を追うTV番組の出演依頼を受け、親友でもあったフリオと過ごした青春時代や自らの半生を追想していく。

ビクトル・エリセ31年ぶりの長編新作。じっくりと構えた語り口で、“アイデンティティと記憶”の物語は徐々に徐々に全貌が浮かび上がっていく。『ミツバチのささやき』アナ・トレントが今作でも“アナ”役として登場。

劇中劇である未完の映画に登場する“悲しみの王”は失踪した俳優フリオと、さらには元監督のミゲルにも重ねられるかもしれない。未完の映画と主人公たちの人生、それぞれが欠けている部分を補完し合い埋め合わせるかたちで本作は結実する。何とも沁み入るような感慨と余韻が残る。
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