ささい

瞳をとじてのささいのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.9
静かで美しくも儚い映画。
アンドレイ・タルコフスキーのような、とても静か故に一つ一つの些細な音が耳に入ってくる。特に屋敷の音作りはこだわりを感じる。記憶を取り戻さなかったことが、ひとつの救いというか、、決して良い人生で無かった彼の、それ故の望みが叶えられていたのが、ある意味でハッピーエンドなのかもしれない。名前に意味はあるだろうか、名前などただの名前だ。そして記憶は大切だが、それ以上に人は何かを感じでその瞬間を生きるものだ。大切なことは身体が覚えている。柵越しに2人でただ打ち寄せる波を眺めるシーン、あれは10秒に満たないシーンだが、私の見た中で最も美しいシーンと言っても過言ではない。タンゴに心躍らせるあの瞳、過去も未来も関係ない、ただ瞬間瞬間に生きる彼の姿は紛れもなく美しい。それが他の人にとってどうであるかは問題でなく。
光と影の描き方、特に影が美しい。
ささい

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