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裸のランチ 4Kレストア版のCINEMASAのレビュー・感想・評価

裸のランチ 4Kレストア版(1991年製作の映画)
4.0
 原作はウイリアム・S・バロウズが自伝的要素をふんだんに織り込んだ同名カルト小説(河出文庫:刊←僕が所有&読了しているのは河出書房新社:刊の単行本)

 監督&脚本は『ヴィデオドローム』、『スキャナーズ』、『戦慄の絆』、『ザ・フライ』、『クラッシュ』などで知られるカナダの鬼才、デヴィッド・クローネンバーグ。

 が、これはストーリーの要約が難しい作品だ。

【舞台は1953年のニューヨーク。害虫駆除業者をしているビル・リー(ピーター・ウェラー)は、作家を志したが麻薬に溺れた過去があった。が、ある日、彼は麻薬所持の疑いで警察に連行されてしまう。害虫駆除薬に麻薬成分が入っていたのだ。が、そこで、彼は、<彼の上司だと名乗って現れる巨大な喋るゴキブリ=羽の内側にアナル様の穴があり、そこから喋る&そこにゴキブリ駆除薬を塗ってやると悦ぶ>を見せられて仰天。その巨大ゴキブリは「お前の嫁は<インターゾーン商会>の回し者だから殺せ!」と言う。ビルは激高して、その巨大ゴキブリを叩き殺して家に帰る。帰宅すると、ゴキブリ駆除薬注射でジャンキーになっている妻(ジュディ・デイヴィス)が、ビルの仲間たちとSEXに励んでいた。しかし、その頃にはビルも妻と同じくジャンキーになっていた。主治医のベンウェイ医師(ロイ・シャイダー)が処方した薬にも麻薬成分が入っていた上、ビルはそれに駆除薬を混ぜて使用していたのだ。ほどなく、彼は妻と共に<実弾を用いたウイリアム・テルごっこ>に興じて、誤って彼女を打ち殺してしまう。妻の遺体を遺して酒場に入ったビルは、そこで異形の怪物=マグワンプから、<北アフリカに在るというインターゾーン行きのチケット>を手に入れ、異国の地に逃げる。そこで、<巨大なバグライター=ゴキブリ様のタイプライター>を使って処女小説の執筆を始めるビル。しかし、<インターゾーン>は幻想と奇異な人々が入り混じった不気味な世界だった……】というスジ。

 大物プロデューサーのジェレミー・トーマスが「これを映画化出来るのはクローネンバーグしかいない!」と目を付けて指名した作品だ。

 出演は上記の他に、イアン・ホルム、ジュリアン・サンズ、モニーク・メルキューレ、二コラス・キャンベル、マイケル・ゼルニカー、ジョセフ・スコーシアニーら。

 本作は、1992年度の全米映画批評家協会賞で監督賞&脚本賞を、NY映画批評家協会賞で脚本賞と助演女優賞(ジュディ・デイヴィス)を受賞した。

 僕はこの作品、ビデオで1度、DVDで1度、それぞれ観ている。おまけに初公開時のパンフレット&チラシ(=右添付画像参照)も所有しているが、スクリーンで観た事が無く、機会が有れば是非共に観たかったのだ。

 ウイリアム(・バロウズ)=ビルが<ヘロインをかっくらった状態で興じたウイリアム・テルごっこで殺害してしまった事>や、<海外逃亡=本作内ではインターゾーン。現実にはモロッコ>等は実際に在った出来事だ。逃避行の地で炸裂しまくるワヤワヤな妄想・幻想の数々も、ヘヴィー・ジャンキーとしてバロウズが体験したものだろう。

 それをクローネンバーグは、バロウズ・ワールドを崩さずに、かつ自身の映画としても成立するように、見事に映画化してみせた!!

 随所で登場するゴキブリやクリーチャーの数々が独創的で実に印象的だ(かつ気持ち悪いったらありゃあしない♪) 巨大ゴキブリ・クリーチャーが有する穴や、<『エイリアン』シリーズ>に登場する<エイリアン第二形態=フェイス・ハガー>を思わせるクリーチャーの口(←噴門?)から別クリーチャーが出入りする様は、明らかにアナル・セックスのメタファー(=暗喩)である(←バロウズは両性愛者であったしね)

 ヌラヌラグチョグチョ、ヌラヌラグチョグチョ……

 う〜ん、マグワイプの造形も、劇中げ何度も登場する水棲巨大ヒトデも、登場人物の異様さも、それもこれも全て含めて、全編が実に実に気持ち悪いっ♪(←褒めてます)

 予想不能なけったいな展開も含めて、僕はコレ、大好きだなあ。ロイ・シャイダーが最高&追悼!! あと、イアン・ホルム&ジュリアン・サンズにも追悼の意を……(←尚、主演のピーター・ウェラーは、『ヴィデオ・ドローム』で主演したジェームズ・ウッズに似てるよね。クローネンバーグって、ホントに<血の青そうな男優>が好きだよなあ♪>

 僕は堪能した!!

 尚、クローネンバーグ作品常連のハワード・ショアによる音楽も良かった。また、カメラ・オペレーターとして、このしばらく後に『シンドラーのリスト』の撮影監督を務め、スピルバーグ組常連となるヤヌス・カミンスキーの名が有ったことにも「おっ!」と。

 いやあ、満足、満足。バロウズの文体そのままの映画ではない(というか、あんな狂いちぎった小説を、完全再現なんて出来るわけがない)けれども、それでも充分に頑張っていると思う。その上、紛う事無きクローネンバーグ作品に仕上がっているので、ファンとしては文句を付けるところが無い。
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