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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のmetalicheartのレビュー・感想・評価

4.0
若い女性向きの映画と思っていたけど、誤解してました。
全ての世代、とくに20代以下の世代に見て欲しい、そしてこれは映画だけの話ではなく、特攻隊は80年前に本当にあった事。

現代の女子高生が、1945年にタイムスリップ。
彼女のピンチの時に必ず助けてくれる、優しく逞しい青年。
でも、そこで出会った彼は、明日も分からない特攻隊員。
2人はお互いに惹かれていくが、戦争は厳しくなり、いよいよ出陣に。

昨年、知覧に行った。
その記憶がまだ鮮やかなうちだったので、もう涙が止まらない。

松坂慶子は特攻の母と呼ばれた方がモデルだろうし、百合や千代ちゃんは、お世話をしていた近隣の女学校の生徒。
彼女達の証言も見ていたから、尚更。

特攻隊員は若い子で、20前後が中心で、20代後半までいた。
食堂や施設内での出会いが、初恋だった子も沢山いるはず。
時代のせいで、楽しい青春を送れなかったけれど、彼らだって、今の時代の若い人と同じ。
明るく楽しく遊びたいし、そして恋もしたかったはず。
だけど、命短い彼らには、好き、愛しているって言う事すら出来ない。
それは、自分が幸せにしてあげられないから。
水上恒司の彰は、福原遥の百合に、
もう1人の妹だと言った。
伊藤健太郎は、本当は千夜ちゃんと結婚して、自分が幸せにしたかったのに、
幸せになってくださいとしか言えない。
だから愛する人を守る為に、彼らは戦った。
みんなは、愛する家族の写真、人形を共にして、彰は百合の花と一緒に、燃料片道の飛行機で飛びたった。
これ行く人も辛いけど、見送るのも辛すぎる。

特攻隊員の遺書。
立派な文字に、若者とは思えない立派な文章。
大切な人への感謝やお詫び、愛する人への恋文でもあり、何で彼らがこの若さで遺書を書かなくてはならないのか。
本当は恐怖でいっぱいなのに。
笑顔の写真に反しての内容。
こんな事は二度と起こしてはいけない。

この時代、恐ろしいほどの数の若者が命を落とした。
この世代、丸ごといないのだ。
残された女性たちは、戦後どのような運命を辿っていったのか、結婚出来た人は幸せだ。
1人で生きる人もいる、どうやって生きていったのか、水上くん出演したブギウギでも、語られている。
戦った方々、生きてきた方々のおかげで、今私たちは幸せな時代を生きている。
これは決して忘れてはいけない。
百合ちゃんが、自分の道を見つけて進めたのも、彰との愛から。

確かに百合ちゃんの言う事は正論なんだけど、あの時代の人には辛いんだよ。
思っていても、口に出せない。
逮捕されたら、若い女性でも容赦なく拷問される、そんな時代だったんだから。

ラストの既視感、タイムスリップ描写については、色々あるけど、
とてもいい作品でした。
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