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哀れなるものたちのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.9
 エマ・ストーンが脳が未熟な女性を演じたヨルゴス・ランティモス監督最新作。

 こんなアプローチでフェミニズム映画を撮ってしまうランティモス監督、いつも通り「頭の中を見てみたい」作品に仕上がっている。
 最高に狂ってるし最高に人間を批判してるし最高に笑わせてくれるし映像も最高におしゃれだしでやっぱり自分はランティモス監督が大好きだって再確認した…。

 エマ・ストーンの演技はさすが過ぎたし、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォーには何度も笑わされたし、勢いのあるあの女優をすごい贅沢な使い方するしキャストも本当に豪華。

 これは、女性が獲得する自由意志の物語。そして人間たちの哀れな愚かさが浮き彫りになる物語。

 ベラ(エマ・ストーン)は頭脳も精神も未熟だから、何もわからない。でも外見は大人の美女だから、すぐに搾取されてしまう。
 ただそれでは終わらない。彼女は様々な経験をするにつれて、幼稚で粗暴な男たちを置いてけぼりに成長していき、それに対して男性たちは不快感を露わにする。

 まさに世界を映している映画といえるだろう。表現は奇抜で誇張しているので「先時代の女性がベラのようだった」とまで言う気はもちろんないが、教育を受けさせてもらえないから高度なことができるようになりにくく、高度なことが行えないからまともな仕事・ポストも得られなかったというのは、先時代の女性に広く言えること。そんな女性たちを「お飾り」「道具」と見ていた男性たちがいた(いる)のも事実。
 それが今、男性と同じ教育を受け、才能と努力次第で(完全ではなくとも)男女関係なく活躍できるようになってきた(なることが望まれている)時代へと変わってきた。そんな新時代で活躍する女性に対し、男性や先時代の女性の一部は「可愛げがない」「生意気」といった扱いをしているかもしれないが、自分で生きられるなら「可愛げ」なんかいらない。実力が伴って自信を持つことは「生意気」じゃない。自由に活躍すればいいんだ。男女も、男女以外も関係なく。
 それを体現するベラの人生と、彼女に置いてかれる滑稽な男たちの図、格差と貧困と人間の欲望、それをこんなヘンテコな映画にしてしまうランティモス監督。最高。

 エンドロールまでおしゃれで目が離せなかった…。

なお下ネタだらけという点は注意です⚠️

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