MakikoSato

哀れなるものたちのMakikoSatoのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

映像、美術、衣装、メイクアップ、音楽など、道具立てはアーティスティックだけれど、中身は大変古典的な女の一生譚。語られること、見せられた映像をそのまま受け取ってしまえば「女の人生」SEXと男に割く面積が大き過ぎる。現代においては、ファンタジックな設定を生かして、物語を抽象的に解釈する必要あり。
去勢を拒むのはSEXの自由が女の自立に一番大事だということが言いたいのではなく、自分なりの感じ方、考え方を絶対譲らないという強固な意志を持つことでしか、抑圧に対抗して人間らしく生きることはできないということのメタファーと、私は受け取った。ベラの転機に手を差し伸べてくるのは、常にアウトサイダー(老婆や黒人)というのもtypical だけど、現実の世もそれに近い。もう若くはない自分も作品の中の老婆たちのように後進に生き抜く知恵を授けられるようになるだろうか。
女の一生を解像度高く書き込もうとすればするほど、男の姿もまた高い洞察力で描かざるを得ない。ゴッド、マックス、ダンカン、元夫、娼館の客、あらゆる男の有り様がいちいち納得感あり。ゴッドもマックスも経験から学び謝れる姿勢が重要。ベラの人生はかなりラッキーなバージョン、ゴッドに拾われる前のベラの人生は最悪のバージョン、その間に無数の「普通の」女の人生がある。山羊にも劣る脳みその奴と出会ってしまったならば、裸足で全速力で逃げ出すしかない。