おなべ

哀れなるものたちのおなべのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.7
◉見た目は大人、頭脳は子ども、その名もベラ・バクスター。

◉不幸な死を遂げたベラは、天才外科医フランケンの手術によってこの世に蘇った。幼児の知能でありながら急速に成長していく彼女は、未知なる体験を求めて、とある男と共に旅に出る事に…。

◉第96回アカデミー賞にて作品賞を含む11部門にノミネート、第81回ゴールデングローブ賞では〔作品賞〕と〔主演女優賞〕を受賞した作品。

◉監督らしい、異色な世界観。ただ、『ロブスター』ほど難解ではなく、『聖なる鹿殺し』『女王陛下のお気に入り』ほど衝撃的な結末は迎えないため、1番観やすいかも…。(※類似作品として、『シザーハンズ』が挙げられる)

◉そんな『女王陛下のお気に入り』にも出演している《エマ・ストーン》が、不幸な死から蘇り第2の人生を歩み始める女性ベラを演じる。よく、脱いだ女性を「体当たり演技」と高評価されがちだけど、脱いだから高評価というのは本来なら「=(イコール)」にはならない。ただ、本作の彼女の場合は本当に体当たり演技で、役に真正面からぶつかっていて、セクシュアルさがテーマの難しい役柄を全身で体現していた。※露骨な性描写多め。

◉映像に関して、『女王陛下のお気に入り』同様、広角の魚眼レンズで世界を巡る旅をベラと一緒に鑑賞者にも隅々まで見せてくれる。また、ズームイン&アウトを多用し、見るものを引き付ける独特なカメラワークとアングルが印象的だった。

◉美術や音楽については、ファンタジー味のある非現実的な空想のアート背景と、場面ごとに変化する壮大で扇状的なBGMが異色な世界観を演出し、寓話的なストーリーとテーマを助長していた。(※SEX・ダンスシーンが印象的)

◉総じて、Filmarks平均評価4.1ほどの衝撃はなかったものの、男性社会に対するメッセージ性も含みつつ、五感でも見て楽しめる異色な世界観だった。どうか、女性蔑視の哀れなる男たちが本作のラストを観て震え上がって欲しい…。











【以下ネタバレ含む】












◉全編を通して、独占欲・支配欲のある権威的な男性像が皮肉的に描かれる。まるで、男性主体の社会構造に対して、徹底的に「否!」を突き付けるような…。子どもの視点から世界を見て学び成長して、自己を確立しながら自由に意思決定をする開放的な女性像というのは、ある種この時代と相性が良いのかもしれない…。アカデミー賞にも期待大!



※50本程の滞納中レビューを差し置いて、取り急ぎレビュー。
おなべ

おなべ