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哀れなるものたちのmikeのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

本っっっ当に楽しみにしてたんですが、全っっっ然乗れなくて泣きそうになりました。ぶんぶん回る長縄にいつまでも入れずに終わってしまった感じ。正直ベラ像もベラの自立や解放のあり方も、スノッブな文化人男性が描いた夢としか思えなかった。というかむしろ「解放」とは真逆の、いつものヨルゴス・ランティモス印の「檻」と「人間のさが」からの逃れられなさをより残酷に描いていると思った。

まず、完全に美しく無垢なファム・ファタル(!)が性に、食に、知に、目覚めていく過程。百人斬り男によるグルーミングな処女喪失(概念)や娼館における経験人数や様々なプレイ、男から差し出される牡蠣とシャンペンは、本当に彼女が選択し悦びを感じたことで、本当に彼女の地平を切り拓いたのだろうか?

ベラはAロマンティックでパンセクシャルであるように見えるが、全然自ら冒険しないし、奇想天外なこともたいして起こらない。(ダンスは超良かった!)外の世界に出てからもベラはずっと「檻」の中にいるように見えたし、結局すべてがゴッドの掌の上からは逸脱しなかったと感じた。
ハンナ・シグラから本を授かるエピソードは白眉だった。けれど、わたしがベラだったら絶対にハンナ・シグラはじめ老若男女とセックスしてみたいって思うけどな……(外科医的見地からも)。そもそもエログロ嘔吐胃液泡は描かれるのに、子宮も生理も性病も避妊も堕胎も性交痛も描かれなくて、娼館で「稼いでる」と高らかに宣言されても押忍、、、という感じでした…。(前戯なしのセックスから「学び」とかもう地獄でしかない)

結局わたしを「おいでよ!」と長縄に誘ってくれるのはクズ男マーク・ラファロで…。すぐ泣いちゃうのめちゃくちゃ笑った。ウィレム・デフォーもとても味わい深い演技で愛と説得力があったので、ベラにはそれでもそこを跳躍する新たな価値観や成熟した知性(もしくは感情)を見せてほしいと思ってしまった。創造主を継承し医者を志すという展開は肝のはずなのに、なんだか薄ぼんやりしていて致命的だと思った。(結婚という選択や伴侶選びも。)

もちろん、エマ・ストーンはすばらしかったし、ヴィクトリア朝な衣装×スチームパンクな美術も絵画のようできらびやかだったのですが……。
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