こなぱんだ

哀れなるものたちのこなぱんだのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.6
ちょっとしたモンスターとして生まれてしまった女の子が自立的な女性を目指すランティモス版人生賛歌(ある意味ハッピー映画)

ことあるごとに哲学と自然科学的な理性が称揚され、ぜーーーんぶ最後まで見て思う感想は「すごい!やっぱり頭が良くて可愛い女の子は全てを手にするんだね!」でした

これは、「頭がいい」というところがミソで、頭が良ければ(知的好奇心が強く、哲学や文学を愛し、自然科学にも通ずることができるくらい)、自分を抑圧しようとする外部の男性性(所有欲に発端する)と戦い、自分が何者なのか、さらには自分の性と生を肯定し、それこそ「ありのままの」自分を受け入れ丸ごと愛してくれる伴侶に出会い、結婚もできて(可愛いから)、人間は「向上することができる」と心から信じ、幸せな生活を送ることができるのだろう。

途中まで「こんなに教育万歳の隠れ差別幸せ映画なの?」と思っていたけど、そこはさすがのヨルゴス・ランティモス、バチバチに冷めた目線は失っていなくて、

最後のヤギが出てきた時に「めちゃくちゃエグ!!!!!!」と思って爆笑したのだった。

お前~~~ファーストショットでクラシックからの心臓映す監督が、俺たちを裏切るわけないじゃん!やっぱり!と喜んだ

教育と教養、そして純粋な愛ある家庭に恵まれた者のみが、何かを欠落していたとしても純粋に、性善的に生きることが出来るわけで、それが出来ない奴らは全員ヤギになれってこと!?!?

個人的にもやはり教養が倫理観を育てると思っているから、その考えには全面的に賛成だけどそこに恵まれなかった哀れなるものたちはどう救ったらいいの?教えてランティモス!

後ろに座ってたカップルが終わったあとに「この監督ってすごくセックスシーン好きなのかな」みたいな、あまりに教養のない会話をしていたから、聖なる鹿殺しを見ろ!人間の愚かさと恐ろしさに震え上がるぜ!と、心の中でエールを送りました。
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