SetsukoAzuma

哀れなるものたちのSetsukoAzumaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
天才外科医によって蘇った自殺した女性ベラ。彼女は妊娠した胎児の脳を移植された身体は大人だが、中身は新生児というアンバランスな状態で、世界を見るために、女たらしの男に誘われた冒険の旅に出る。。

なんというか、とても不思議な映画でした。
ファンタジーでエマ・ストーンなのにR18??となりましたが、彼女の身体張ったシーンを不快と思った人もいるくらい生々しいという情報だけは耳に入っていて、観て納得。

固定概念もなく、何がダメなのかや、世間体など一切お構いなしの、感情むき出しの赤子レベルの精神年齢で、大人の身体で快楽に溺れるというのがちょっと個人的には、気持ち悪くなりました。
シーンがどうの、というより、中身は赤子でしょ?と。

第二の人生の生みの親ともいえるマッドサイエンティストな外科医とその弟子(フィアンセ)のもとを去ってから、いろんな情報を得てどんどん成長する彼女だけど、破天荒というか、幼稚すぎるので、純粋というより、狂気に近い感じ。

歩き方や話し方、計算されて役作りされているのですが、人間らしさを感じなかったのは私だけ?

人の痛みを知らなさすぎるというか想像力がないのは明白で、誰にでもなんでも話すし、まったく悪意なく、周りを混乱させる。

彼女を連れだした女癖の悪いダンカン(マーク・ラファロ)は、そんな彼女にのめりこむけど、確実に振り回されるのがわかるのに、はまるかな?と思ってしまいました。

本を読んだり、船で哲学的な話を議論したり、医学を学ぶまで知識をどんどん身に着けていくわりに、どこか抜けてる彼女は、ピュアを通り越して、宇宙人のようにしか見えなくて、ビジュアル以外の魅力がわかりませんでした。

徹底的に抜けてるのが人としての経験値だと思うのですが、子供でも数年もすれば、空気を読むでしょうし、相手の気持ちを察するということは自然に身につくはずなんでしょうけど、知識だけがついても人間は人間らしくはならないんだな、と思いました。

当時、保守的な思想で自由を奪われていた女性たちに反して、自由気ままに生きている彼女は、そういう視点で見ると爽快ではあります。
相手が誰でも嫌なものは嫌!とはっきりと言うベラ。
女性解放の兆しではありました。

そして自由を奪われそうになると逃げたくなる彼女は、変でもなんでもなく、彼女を囲い込もうとする男がやたらヤバいやつなので、逃げて当然。
そこはしっかり共感できました。

しょっぱなから予想が全くできない展開が進みますが、ラストもかなりグロイ、ハッピーエンドで、ぎょっとします。
好みがわかれる作品な理由がよくわかりました。

それにしても一番いい人は、どこまでも彼女を受け入れるフィアンセであることは間違いない。
心広すぎ!