うにゅにゅ

哀れなるものたちのうにゅにゅのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

正直この文章を書いてる今、この作品をしっかり解釈できるとは思えない。アート系の作品として見た時、それは手放しで「良い!」と言えるくらいに、美しい映像効果とショット、エマストーンの演技、被服、全てが素晴らしいのだけれど、映画としてはどうなんだろう?
どちらかといえば演劇の様な即興の媒体で見た方が、「理性と本能の発達」という一つの感覚的なテーゼに触れられる様な…こんなことを言ってしまうのは野暮だけれど…映像の機微と内容の平坦さのギャップがメッセージを覆い隠してしまっている様なイメージ。

恐らく作品の根本にあるのはキリスト教の教義に基づく、人類の愚行、その様相の表象なのでは?と思う。これと言った根拠はあまりないけれど…アダムとイブの話に近いと言う人もいそう。
神から与えられた身体を、当事者がどの様な意識を以って使役していくのか?なぜ人は間違うのか?リビドーは本当に愚かな感情なのか?神(作中でいうゴッド)は完璧なのか?人は自身の人格を確立した先に何を見るのか?
↑こういうテーマがあるのではないかと思う。多分…

物語の中で一つ考えるところ、マズローの五段階欲求(安全欲求と承認欲求は明確に描かれていたかは不明)に従ってベラは「発達」していったのだろう。断ち切れない生理的欲求への葛藤と最終的な受容、これだけは1人の人間として共感する部分かなぁ。1人の人間が自我を確立するストーリーだと思えば、そこは面白いなと思う。
ただ、エロティックなシーンが大半を占めていて、あぁ思ったより生々しいな…もっと派手かと思ってた…みたいな失望がある。多分、自分がこの作品を履き間違えて鑑賞している可能性が高い。絶対アートだもん、前提が。それ以上に求められるテーゼは明確である必要性を持たない。

夢見心地な映像効果と可愛らしいベラの服装、心踊る冒険のシーン(特にダンス!)はとても素敵だった。それらの美的演出と物語の生々しさ、そのギャップは観客を困惑させつつも、生を肯定する礎にもなり得るかもしれない。
ただ、難しすぎた、論文や解説に沿ってもう一度鑑賞してみたい。
うにゅにゅ

うにゅにゅ