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哀れなるものたちのブタブタのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
「文学と三文ポルノ小説の境界とは」
一言で言うと《富士見ロマン文庫》の世界。
原作はそうでもないのに映像にするとやっぱり下世話でドギツイエロの部分が前面に出てくる。
《富士見ロマン文庫》とは

富士見ロマン文庫(ふじみロマンぶんこ)は、かつて富士見書房が発行していた文庫レーベル。1977年から1991年にわたって、200冊近くの海外の古典的な性愛文学・官能小説が翻訳出版された。現在では全て絶版。
創刊当初の帯コピーは「ホットなフィーリングをのせて世界のポルノグラフィーがやって来る」。他に「ナウでファッショナブルでエロチック」等。金子國義、池田満寿夫らが表題画を担当した。金子の画については後にコレクションカードとして限定復刻もされている[1]。艶本叢書という性質から訳者や挿絵家については変名でのクレジットが複数あるとされる(Wikipediaより)

澁澤龍彦・訳のマルキ・ド・サドも富士見ロマン文庫で『ソドム』始め多数出ていた。
有名作家が名を隠して書いた作品など《作者不詳》作品も数多くあった。
中でも凄まじい作品が作者不詳『ペピの体験』(『バンビ』の作者が書いたらしいとの事)
30年で3万人以上とやったと豪語する娼婦ジョセフィーヌの少女時代の回想録という形で少女ペピの五歳から始まった性の遍歴が文庫400頁以上に渡り延々とドギツイハードコアポルノ描写が続く官能小説というか或る意味、実験前衛小説。
キャシー・アッカーの実験前衛文学『血みどろ臓物ハイスクール』読んだ時、この『ペピの実験』を真っ先に思い出した。
『哀れなるものたち』も少女(脳が🧠)の性的抑圧・軟禁状態からの出奔と冒険を主に性的な解放によって描くってこの手のテーマの作品は割と多い。
ただ昨今の事情(昔もか)本物の少女でこの手の作品を作るわけにはいかないよね。
原作との一番の違いは矢張り映像があるわけだから美術デザイン、世界観をスチームパンク風近過去SFにしてコレがまた素晴らしい。
正直、話しの内容はあんまりで(原作は面白かったのに不思議)感動したのはセット、美術だけ。
船で途中寄る全部砂で出来てるみたいな島、ホテル、その下に広がるスラム街ってあそこが特にすごかった。

《余談》
今は昔90年代、年二回のコミケでは所謂《二次創作エロ同人誌》がしかも無修正で売られてて、其れを描いてるのも売ってるのも買ってるのも未成年者だったり今思えば滅茶苦茶な時代だった。
そして当時アニメ『世界名作劇場』の二次創作エロ同人誌を出してるサークルがあって『ペリーヌ物語』の二次創作で『ペピの体験』を原作に漫画化した100頁以上の分厚さの同人誌があって買ったのだけど取っとけばよかったな~と後悔するばかり。
『ペピの体験』はサドの『ソドム』と双璧を成すエログロ変態SM文学の傑作だと思うけど内容がアレだし(ぺドフィリアだし)文庫も絶版でこの先も《完訳版》等が出る事はないと思われる。
しかし特に美少女エロ漫画には多大なる影響を与えており奥野ビルで個展も開催した某美少女漫画家もインタビューで確か影響を語っていた(pixiv百科に項目もある)

しかし『哀れなるものたち』を無修正で公開出来るならグリーナウェイの『エイゼンシュタイン』も公開して欲しい処。
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