あちゃみ

ラン・ラビット・ランのあちゃみのネタバレレビュー・内容・結末

ラン・ラビット・ラン(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

終始不気味な雰囲気で良かった。

7歳の誕生日を迎えた娘の様子がおかしい。
会ったこともない祖母を恋しがったり、
自分のことを昔失踪した母の妹アリスだと言い張ったり、まるで人格が変わってしまった様。
強くねだられて母の介護施設と自分の生家を訪れて、封印していた忌まわしい記憶に向き合う母、サラ。

よく分かんないシーンが続いて、居なくなった妹が娘に乗り移る心霊系か実際におかしいことが起こってるかどっちだろうってなってるとこに、サラが無意識に黒い落書きしてるシーンで鳥肌たった。
娘の誕生日から様子がおかしいのはミアではなく、サラ。子供のころに妹をウサギの罠で殴って怪我させて衝動的に崖から突き落としたサラはおそらくそれに気づいていた(か自分から話したか)父親から慰められ、監視されることで精神を保っていたが、その父親が亡くなってしまった今、罪悪感に苛まれ、殺してしまった妹が自分の娘を使って復讐しにくるかもしれないという被害妄想に取り憑かれる。奇しくも娘は死んだ妹と同じ歳。自分の周りで起きることと思い込みの境目が曖昧になっていくサラ。
ミアからすると怖かっただろうな、納屋に入ったかや写真を戻したかを聞かれ「やってない」と言っても信じてもらえず、鼻血や額に傷がつくほど暴力を振るわれ、我に返って謝られ、寝起きにはさみを振り回される。迎えに行った時に狭い土管でまるでウサギの様に震えていたのも、様子のおかしい母に恐怖し、帰りたくなかったのかと思うと可哀想すぎる。
また怖いのが、妹を殺すモンスターのような人間が一方で母親に胎動を聞かせてあげる、
命を生み出す職業についていること。
人間の暴力性を描いててそこもゾッとする。


ラストシーンはさらっと殺されてた元夫を考えると自分が殺した妹がミアを連れて行く(妄想)なので自分で娘も殺しちゃったのかな。

せん妄の加害者の頭の中を覗いたかのような感じ。自分で虐待して殺したのに「死んだ妹が娘を連れて行った。私は止めようとしたのに!」と主張するんだろうか、、
恐ろしすぎる。

最後の「I am a monster」は自己との対話だと思う。ラストシーンすべてが妄想or 悪夢で、正気に戻ったら眠る娘と元旦那が居て、自分の罪を告白して償うと決めるエンディングであってほしい。

タイトルのウサギ、妹アリスの名前から不思議の国のアリスにかかってるのもそうだけど、父親が捕まえていた"害獣"で、サラが罠で手にかけた獲物。その対象はいまや娘になった。そうなるとタイトルも怖い。

演技も雰囲気もいい映画だった。
あちゃみ

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