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ザ・クリエイター/創造者のナーオーのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.0
試写で一足早く鑑賞〜!!

ギャレス・エドワーズ
『ローグ・ワン』以来、7年ぶりの最新作。
完全オリジナル脚本となる本作『ザ・クリエイター 創造者』ですが、ギャレス・エドワーズ監督のオリジナル映画としては2010年に公開された長編監督デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』以来。

エアロスミスの「Dream on」が使用された予告を観て以来、楽しみにしていました。

AIが暴走してロサンゼルスを核攻撃したという『ターミネーター』を強く連想させる設定やリドリー・スコットの『ブレードランナー』や『AKIRA』、『攻殻機動隊』といった日本のコンテンツをはじめとしたサイバーパンクものへのリスペクトを感じる本作の舞台となる"ニューアジア"。

ギャレス・エドワーズ監督のオタク魂が炸裂した、いわゆる"俺の好きなものだけで作ったSF映画"と思うかもしれませんが、それだけに収まっていないのが本作『ザ・クリエイター』の特徴。

AIが核を投下したことからアメリカは、
"AI狩り"を国内だけではなくAIと共存している他の国々に対しても行い、一方的に他国に侵攻している… という本作のアメリカ描写。

アメリカ兵が村を奇襲して泣き叫ぶアジア人の少女を脅す。非武装の市民だろうと容赦なく攻撃。最終的には上空からミサイルを撃って村を消し去る。

明らかにベトナム戦争を意識していると思われるアメリカとアジアの対立構造。
オリバー・ストーンの『プラトーン』や『天と地』、他にも潜伏していると思われる重要人物を暗殺する任務を与えられたジョン・デヴィッド・ワシントン演じる主人公ジョシュアの設定はフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』を連想しました。

SF作品ながら、ベトナム戦争や今現在起こっているあらゆる戦争への批判が込められており、同じようなことを目指したジェームズ・キャロメンの『アバター』よりも戦争そのものを複雑さやるせなさ、そして無意味さを描いていたと思います。

また本作AIの描写がなかなか斬新。
AIやアンドロイドを登場するSF作品、『ブレードランナー』や『エクス・マキナ』、『チャッピー』、それこそスティーヴン・スピルバーグの『AI』など数え切れないほど多くありますが、本作『ザ・クリエイター』はそのどれよりも人間臭い。

劇中、渡辺謙が演じている見た目が人間に近いヒューマノイドはもちろん、見た目が『チャッピー』のようなロボットもほとんど人間。ここまで人間と同じように描いた作品は珍しいと思いました。

SF描写も一定のリアリティを重視しているエドワーズ監督らしく、ニール・ブロムカンプ作品のような泥臭さが残る、地に足の着いたSF描写で良かった。劇中で出てくるSFガジェットなどを台詞による説明ではなく、映像でその機能を見せてくれるところも何気に良かったし、ギャレス・エドワーズ、単純に映画監督として上手い!

『ザ・バットマン』や『マンダロリアン』そしてなんと言っても『デューン 砂の惑星』でアカデミー賞を受賞した撮影監督グレイグ・フレイザーが撮る映像も素晴らしい。自然豊かな風景の中にあるSF描写。めちゃくちゃ美しかったです。

全体的には大満足。
強いて言うならジョン・デヴィッド・ワシントン演じるジョシュアとマデリン・ユナ・ヴォイルズ演じるアルフィー。この二人の演技は素晴らしいのですが、友情を築くのがちょっと早い気がする… それこそ前半は『モンスターズ/地球外生命体』のようなロードムービー的な展開がある分、この二人がお互いを信頼する過程をもっとゆっくり描いても良かったと思います。

7年ぶり久しぶりの監督作となりましたが、サイバーパンク好きな自分としては『モンスターズ』や『ローグ・ワン』よりも好き。ギャレス・エドワーズの確かな才能を見せつけられる良作だったと思います。

今思えば実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』の最適な監督はルパート・サンダースではなく、ギャレス・エドワーズだったと再確認させられました。是非ともギャレスには実写版『サイバーパンク2077』の監督になってほしいです。
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