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ザ・クリエイター/創造者のfujisanのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.0
映画オタクによる映画オタクのためのインディペンデントSF映画。

個人的にも大好物のジャンルなので公開後すぐに観ていたのですが、情報量が多くてなかなかまとめきれない映画でした。

ギャレス・エドワーズ監督による完全なオリジナルストーリーで、
『ロボットのような人間 vs 人間のようなロボット』による戦争もの。
これを、アメリカ(アメリカ軍) vs ニューアジア(AI)の構図で描いています。


■ 映画の特徴

「ローグ・ワン」で実績があるギャレス・エドワーズ監督作品であるにも関わらず、オリジナルストーリーであることを理由にGOがかからず、ならばと元々監督が得意とするVFXをベースとして低予算映画で作った映画
・SONYのFX3という50万円程度のカメラを使用
・先に世界中の土地で風景を撮影し、後から遠景や人物を合成する通常と逆の手順で制作
・制作費は推定8000万ドル(120億)。パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズなど、ハリウッド大作が軒並み3億ドルを超えていることを考えるとリーズナブル


■ 俳優

・デンゼル・ワシントンの息子で「TENET」等で主演したジョン・デヴィッド・ワシントンが主演。香港出身の女優ジェンマ・チャンがその妻役。
・アメリカ軍の女性指揮官役は、「トゥ・レスリー」でレスリーを最後に受け入れてくれた友人女性ナンシー役のアリソン・ジャネイ
・子役のマデリン・ユナ・ヴォイルズは数百人の候補からひと目見て直ぐに決まったとのことで、微妙な表情の演技が素晴らしかったです。


■ 感想

監督自身が日本カルチャー大好きの映画オタクで、とにかく色々な映画や漫画からの膨大な量の引用、オマージュに溢れた映画。

オリジナルと銘打った割にストーリーは平凡だったような気もしますが、個人的にはオタク心を満足させてくれる100点の映画で、久しぶりに円盤出たら買おうと思った映画でした。

以下、引用やオマージュについて整理し、最後に少しラストシーンについての個人的ネタバレ考察を書きたいと思います。

長くなりますので一旦これにて・・



   ◇  ◇


以下、テーマ別に整理。なお、あまり書かれてないのではという自分の感想に★を入れてます。

□ ストーリー(ジョシュアとアルフィのロードムービー)

・監督いわく「子連れ狼」にインスパイアされたもの。ほか「マンダロリアン」や「ターミネーター」、AI兵器の子供観点で「AKIRA」にも類似
・個人的には、士郎正宗の漫画版「アップルシード」にも似てると思った★
・主人公の名前ジョシュアは、旧約聖書 出エジプト記にあるモーセ(モーゼ)の後継者ヨシュアの英語読みであり、約束の地へ導く全体ストーリーのベースになっているのではないか、という見方も。


□ ノマド(上空から敵をなぎ払う最終兵器)

・「スターウォーズ」のデス・スター
・「AKIRA」の衛星砲SOL(照準のギミック含む)
・「未来少年コナン」の空中要塞ギガント
・「天空の城ラピュタ」の浮遊城ラピュタ(中で植物が育っている)
・愚かな人間が神に挑戦するかのごとく塔を造り滅ぼされる。その後、各地に異なる文化が育っていくという旧約聖書のバベルの塔という見方も。


□ 全体の世界観

・「地獄の黙示録」「プラトーン」のベトナム戦争
・「スチームボーイ」、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」など、古い技術と独自に進化を遂げた最新技術が融合している世界
・「ブレードランナー」、「ブレードランナー 2049」。龍角散のネオン広告も健在
・「エヴァンゲリオン」。唐突に文字が入る編集、マヤのラストの衣装がプラグスーツ、どちらも旧約聖書ベースの世界観である
・最新科学と宗教が混在している士郎正宗の「仙術超攻殻 ORION」にも似てる気がしました★


□ AIの世界観(アイデンティティ)

・士郎正宗の漫画版「攻殻機動隊」。アニメ版攻殻機動隊であれば「イノセント」。いわゆる『囁くのよ 私のゴーストが』っていうやつ。本作のシミュラントは攻殻機動隊の義体であり、違う義体に脳だけを移植した場合、それはその人と言えるのか?という哲学的な世界観がある
・「ブレードランナー 2049」でアナデアルマスが演じていた汎用アンドロイドのジョイ、「エヴァンゲリオン」で大量生産される綾波レイのクローン
・こういった世界観は「ブレードランナー」シリーズのレプリカント、「エクス・マキナ」など、数多くのSF映画で語られているテーマかと思います

まだまだありそうですが、キリが無いのでこの辺で。

以下は、ネタバレ有りの考察を少しだけ。





















■ ラストの解釈

印象的だったのが、ラストシーンでのアルフィの複雑な笑顔。

帰還した彼女を神の降臨のように迎え、歓喜に湧く大群衆の中、決して満面の笑顔ではなく微妙な笑顔だったことで、ハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのか、意見が分かれているようです。

個人的には、アンハッピーエンドなのではないかと思います。

理由は、映画のパンフレット表紙の裏に書かれた文字です。

『Created to SAVE us.』(私たちを救うために創られた)

この、"save" が手書きの横線で消され、"DESTROY" と書かれている。つまり、『Created to DESTROY us.』 (私たちを破壊するために作られた)と書かれているんですね。

なので、救世主ではなく、破壊するために降臨したのかなぁ、と。。

監督のインタビューを読むと続編は無さそうですが、是非続編を作ってもらって答え合わせをしたいものです。




2023年 Mark!した映画:309本
うち、4以上を付けたのは34本 → プロフィールに書きました
余談はコメントに書きました
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