こたつむり

ラブ&ポップのこたつむりのレビュー・感想・評価

ラブ&ポップ(1998年製作の映画)
4.0
♪ どこへでもつづく道がある
  いつの日か I’ll be there…

庵野秀明監督(新人)の作品。
いやぁ。凄い作品ですね。淡々としているのにグイっと惹き込む剛腕は見事な限り。新人の筆致とは思えません。え?新人じゃないの?『エヴァ』を作った監督なんですか?へえ。そうなんだ(棒読み)。

異様にこだわったアングルも絶妙です。
というか「臨場感を出す」という理由を盾に、スカートの中身を撮りたかっただけでは?と思うほどに艶めかしい場面が多かったですけど。

でも、確かに当時はそんな雰囲気でした。
僕の記憶では女子高生のミニスカートが全国的になったのは90年代前半。本作が劇場公開された頃(1998年)も未だに“魔力”は健在でした。

それを見事に捉えたからこそ。
90年代の空気を物語から感じるんですね。安易に流行曲やファッションを映さずに、フェティシズム丸出しの姿勢だけで表現できたのは“天才の所業”だと思います。

また、配役のセンスも見事でした。
物語の中心に据えた女子高生四人組の中で最も“凡庸”に見える娘が主人公ですが、それが作品に息吹を与えているんです。これを脇にいる仲間由紀恵さんに変えていたら、この絶妙なバランスは保てなかったと思います。

ただ、時折、見え隠れする“説教臭さ”は…。本気なのか、冗談なのか…。好意的に解釈すれば後者なんですけど。本気で説教しようとしているのなら…こだわり抜いたカメラアングルが逆に痛いですよね…。

まあ、そんなわけで。
天才が描く90年代の物語。過去を懐かしむという意味も含めて、今後も輝き続ける作品ですが、人を選ぶのも事実。期待値は高くしない方が良いです。

最後に余談として。
それにしても渋谷は本当に様変わりしたんですね。駅前は西も東も変わりましたが、渋谷川周辺も同じ。夏場はとても臭い川なんですが、渋谷ストリームができて少しは綺麗になった気がします。

しかし、よくもまあ、あんな場面(スタッフロール)を撮ったものですね。やはり、庵野監督(新人)は天才だな。
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