月うさぎ

ツーリストの月うさぎのレビュー・感想・評価

ツーリスト(2010年製作の映画)
4.0
ロマンチック・クライム・コメディ?
アンジェリーナ・ジョリーが無駄に、もとい!非日常的にゴージャスで美しい。パリ、ヴェネツィアと異国情緒たっぷりの舞台で繰り広げられるスリラー。
評論家からは評価が低めなようだけれど、私としては好みの映画。ただしどんでん返しのオチだと期待しすぎない方がいい。
コメディなんだから先読みする気なら当然展開は読めますよ。でもそれを自慢して映画の評価を下げるのはどうかと思う。犯人当ての推理小説じゃないのだ。結末をいかにスマートに見せるか?が映画のいいところじゃないの。私はその部分が粋だったと感じた。リアリティは全然ないけど。無理だろうそれは、とは思うけど。
シャレた演出、シャレた会話。役者の演技を感じるいい映像。それが有ればいい。

サンタ・ルツィア駅からボートでカナル・グランデのホテルにチェック・イン。しかもそのホテルがダニエリだなんて!ああ、憧れる。その上ドージェの間に入れるなんて!それだけで気分がハイに!某国のイタリアロケ映画のような観光地巡りとは格が違う。
ヴェネツィアでは映画のロケは数限りなく行われているけれど、この映画はヴェネツィアの姿が特によく表されているように思える。
フランクは観光客という設定なので、ホテルやレストランや景観を楽しんで当然な訳だしね。この場所に一緒に連れて行ってもらっているかのような楽しさ。

この映画にスリリングなアクションや複雑な謎解きを期待すべきでは無い。そんな無粋な映画じゃないんだもの。
運河をボートで逃げてもスピードは出ないし、走って追いつけちゃう。アクションで見せるには限界があるでしょう(笑)

「8時22分、リヨンからヴェネチア行きの列車に乗り、僕の体格に似た男を選んで警察に僕だと思わせろ」

やってることはスパイやギャングが出てくる犯罪映画だけど、ユーモアがあってちゃんと観ればコメディ映画。ツーリストのタイトルのオチで締めるセンスもいい。
ドレスやアクセサリー、室内装飾の豪華さといった女性にヒットしそうな要素が多いので、男性より女性にお勧めしたい。

キャストもこれで良かったと思う。
ジョニー・デップのもっさりオドオド演技、結構似合ってる。トム・クルーズじゃただの旅行者には絶対に見えないもの。
アンジェリーナ・ジョリーは完璧な謎の美女。フランス語の発音もなにげにうまかった。
出演シーンは少ないが、ティモシー・ダルトンがいい。彼が締めてくれたからこの映画が締まったとさえ思う。いい役者はどこか違うんだな〜。

スコットランド・ヤード警察のアチソン警部のポール・ベタニー。仕事に対する執念というよりエリーズへの横恋慕による嫉妬から暴走するアホ男を露骨にではなくわかる人にはわかるように(リアルにみっともなく)演じていてこれも笑える。

男女の出会いだって最初は探り合い、謎解きみたいなものでしょう?
人間関係の機微を察知し本心を押し測り、効果的なセリフを絞り出し、自分をアピールする。それだって充分スリリングではないかと。
月うさぎ

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