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ノクターンのCINEMASAのレビュー・感想・評価

ノクターン(1980年製作の映画)
3.0
 デンマーク映画学校在学中の1980年に撮り上げた8分の短編映画だ。トリアーのフィルモグラフィ中、最初期の作品となる。ミュンヘン映画祭短編賞受賞作。

【ある夜。一人の女性が眠れずに知人と電話で話している。彼女は<光過敏症>で日中は外を出歩けない。しかし、彼女の手元には、翌朝6時10分、ブエノスアイレス行きの航空券が有った。彼女は一歩を踏み出すことができるのか?】というスジ。

 デジタル上映だが、素材の修復は行っておられず、全編に画面に雨が降っており、ノイズも多く入っている状態。まあ、イイけど。

 初期トリアー作品で多用されたセピアの色調は本作から観られる。映像詩といった趣き。倒れた瓶から床に滴り落ちる液体(酒?)の描写は、アンドレイ・タルコフスキー作品のよう。この作品から既に、トリアーの作家性は十分に発露されており、鬱屈した描写が続く。希望に溢れる終幕を迎えるが、恐らくフィルターを使用しており、寒々しい青味がかった色調であるため、爽快感は薄い。<トリアー・ワールドは初期から現在まで続いている>という証左たる作品。観られて良かった。

 あ、余談ながら、本作の主人公はブエノスアイレス行きの航空券を持っているけれど、トリアー自身は飛行機恐怖症なので、飛行機には乗られない人なんだよねー。
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