メイクが濃くなるたびに、彼の好みの服を身に着けるたびに、作られた「プリシラ」の形が完成していく。
従順に愛して、胸の痛みには蓋をする。
キュートでキラキラしたロマンスは、ダークで残酷なリアルへ。
ロックスター・エルヴィス・プレスリーに「相応しく」、どんな時でもつけまつ毛を重ね、メイクで武装する。
彼女の、それだけがアイデンティティと言うのが観ていてつらくて、同時に彼女の処女性にこだわるエルヴィスに嫌悪感を抱いた。
ただいう事を聞くだけの寄り添い方は愛じゃない。
犠牲を伴いながらも気づき、成長する、プリシラの姿が儚くも美しかった。
たとえ捕らわれた籠の中の鳥でも、世界の広さを知れば翼を広げてどこまでも飛んでいける。
そう思わせてくれる様なラストがとても眩しくて、心がスッとした。
それからエンディングの曲もよくて、この曲を選んだ意味を知ってさらにこの作品が大好きになった。