コーディー

プリシラのコーディーのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
3.8
エルヴィスという稀代のスターの輝きに導かれ夢のような人生の扉が開かれた14歳の少女プリシラ。けれど彼女が思い描いた憧憬はグレイスランドに囚われたまま暗く沈んでいく…
一番近くにいるのに届かない光、ぼんやりと混乱しながらも愛を求め続けた少女の肖像をソフィア・コッポラ監督らしい控えめな視点で見つめる。

ファンからパートナーへ、世の女性たちが羨む存在となったプリシラの孤独、豪華な邸宅の中で一番望んだものだけが零れ落ちる哀しみを断片的に重ねていく…
そこにはエルヴィスの栄光などの直接的な描写はなく、あくまでスターの陰に生きたプリシラの世界な焦点をあてている。
と、彼女の陰鬱な感情をより際立たせる構成も良かった。

あどけない14歳の少女から目覚めに至る28歳の女性まで、時代毎のプリシラの変化をビジュアルと表現力で見事に演じるケイリー・スピーニーが素晴らしかったし、何も制御できない不安や恐れ、不思議の国を彷徨い続ける純真な心に魅せられた!
また彼女を支配的に縛りながらも脆さや未熟さを覗かせ、新たなエルヴィス像を表現するジェイコブ・エルロディも凄く良かった。

まあ身長193cmと長身過ぎる彼のエルヴィスがプリシラとの関係を実際の年齢差以上に大人と子供に見せてたけどw
哀しみを経て大人へと旅立つ少女の物語は、まさにソフィア監督の真骨頂といった感じで好きです!