ゆっこ

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!のゆっこのレビュー・感想・評価

5.0
吉田会長がゲロ吐いてて嬉しかった。

以下ネタバレ


















鑑賞後に感じる、「夏の終わり」感がヤバい。
コワすぎの最後にして最高の祭りに参加して、高揚感やら喪失感やら、まさかコワすぎでこんな気持ちになるなんて!という複雑な感傷…。



何故、遥と琴子だけでなく、絢音、そして大輝までもが性加害にあった過去を持つ必要があったのか。

工藤がもう1人の自分の欲望に対し「支配」という言葉を使った瞬間から、ああそうゆう映画なのか…と一瞬で構造を理解したというか…

浮かんだのは、映画業界、エンタメ業界に蔓延るあらゆる形での支配。
被害者は女性に限られないし、加害者だって男性とは限らない。

絢音も大輝も俳優が演じているわけで、「そういった経験を持つ人が集まる」事の意味をメタ的に考えて勝手に納得してしまった。

だから、過去に干渉してはいけないと全員が戸惑う中、市川さんが「やれ!」と遥をけしかけるシーンはちょっと泣きそうになった。
過去に干渉して何かが起きてしまうとしても、今目の前でもう一度犯される女性達に何も働きかけないなんて、絶対あってはいけない。
市川さんがその行動を良しとしてくれるのが、すごく嬉しい。
その方法が金属バットによる暴力なのも、とてもコワすぎらしくて良い。

珠緒師匠がこっちに語りかけるのも、グッときた。
映画の中にいる人だけじゃなく、映画を見ている人も、声をあげよう。
黙っていないで、NOと言おう!
そんな気持ちと、プリキュアかよ!の笑いの狭間で、笑いながらまたちょっと泣きそうになったw

鬼村さんを先頭にひたすら進むシーンも良かった。
いや、怖かったけど。
絢音と大輝が追いかけられる過去の声の怖さの質はコワすぎらしくない生々しさで、だからこそその悲痛さが際立つ。
いろんな場所や時間にとらわれて、後ろから怖い過去が追いかけてくる。
そんな彼らに、「後ろを振り向くな、前へ、前へ。自分が後ろにいるから(安心して)」と言う鬼村さんカッコよすぎよ…。
大人って、そうあるべきだよ。

そして工藤。
本作の工藤は時代に取り残されたまま歳をとったイタいおじさんになっている。
その姿は少し寂しいけど、受ける市川さんのキャラ変とのマッチングが良く、どこか可愛くも感じた。

あの工藤が弱気になるのを、田代くんと市川さんが必死に説得するのには笑ってしまった。
工藤についていってたんだから、この人たちもヤバいんだったよなってw

本作ではそんな「満たされない工藤」の支配欲が、別次元での工藤として存在し、遥と琴子を苦しめてしまっていた。
そんなダーク工藤を前にして、「確かにそんな欲求がある」と認め、その上で「出てくるなら何度だって殺してやるよ!」とあの頃の荒々しさそのままに、圧倒的かつシンプルな暴力でそれを制圧する。
なんという主人公、工藤!
花子さんの時も熱かったけど、本作では自分の一番醜い所を「認めた上で」何度でもぶっ殺す!はかっこよすぎる。
自分のことは自分でケジメをつけられる男、かっこいいぞ!
絶対に何度でも殺すだろう。だって工藤の暴力は凄いからw
熱くなると同時に、工藤が正しく金属バットを持った事に祭りの終わりを感じて寂しくもなり…。
最終回なんだねえ(涙)

…となんか真面目なことも書いたけど、基本めっちゃ笑いながら見ました。
ほんと楽しかった。
まじで楽しかった。
ずっと楽しかった。
白石くんの最高傑作だと思った。

「あの頃の工藤と市川さん」ではない寂しさを感じているうちは新キャラで盛り上げてくれて。

鬼村さんがチャリでキーってやってきたり、「はしゃぐな!」って急に大輝にキツくなったりw、「正直わからん!」て開き直ったり。

もちろん珠緒師匠は最高のヤンキー魔法少女だった!
突然ヌルッと現れて、鉄パイプ製の魔法のステッキを持って、カメラの前でクルンと可愛く回転するだけで時空を超えて、今度は工藤を助けてくれた。(中の人が花子さんの時のナナちゃん)

珠緒師匠と鬼村さんのスピンオフ見たい…。

赤い女さんがさらっとパーティに入ったのにも爆笑したし、あのラストからのED曲はズルすぎるw

重いテーマをコワすぎらしく表現するのに、これ以上の方法はなかったと思う。

いろんなことがあったし、消えた過去も消えない過去もあるけれど、この映画はとにかく優しくて、救いがあって、抗う力があって、それがとっても嬉しかった。

私の前には時空を超えられる珠緒師匠は現れてくれないけど、それでもいい。
私にだって、幽霊や嫌な過去を物理で殴れるかもしれない。
いや、絶対殴れる。
市川さんは殴れって応援してくれるし、五芒星の中心に工藤が立ち一緒に過去を迎え撃ってくれる。
そんな風に思えて、とりあえず明日金属バット買いに行こうかなって思いました。
ゆっこ

ゆっこ