とり

月面着陸のとりのレビュー・感想・評価

月面着陸(2019年製作の映画)
3.7
漫画の宇宙兄弟みたいな感じを想像してたらかなり違いました。
アマプラの字幕で鑑賞しましたが、この字幕かなりクセがあり文字にミスもありやや残念です。
イタリア語のため挨拶等の簡単な単語以外何言ってんだかわからないので、細かいニュアンスがつかみきれませんでした。
とは言え、2人の兄弟は言葉数が少なめなのでまぁ許容範囲。

この兄弟よく肥えてるな。それが一番の感想。
映画自体はほんわか優しい雰囲気に包まれてますが、内容はかなり重め。
この丸い体型とむさいヒゲづらがある種の可愛さを醸し出してるのがゆるい作風に大きく貢献してます。
子供の頃以来会っていなかった腹違いの兄弟。少しずつ距離が縮まっていく様子がとてもとても丁寧に描かれています。
その過程で描かれる町の人々との関わりも妙にリアル。少ない言葉で表現される空気感が染み渡ります。

身内に奇人変人タイプがいる大変さや、本人の生きづらさ、周囲の人々の接し方など、登場する全ての人がそれぞれができる範囲で理解しようともがいている様が見て取れます。
時にはストレートに怒りをぶつけあい、時には折り合いをつける。価値観の違う他者を認め合うって本当に大変。隣人を愛せよってやつ。
ラストでの皆の表情に全てが込められているように感じました。
兄が言ってました。「一番難しいのは発射」これは技術的なことよりも父へのわだかまりを乗り越えて地球の重力から脱出できるのかということだったのでは。

イタリアの地方の田舎町の風景、登場人物全てがおとぎ話のよう。なのに地に足がついているリアルな実在感もあります。
スウィング系の音楽が流れるエンドロールが心を落ち着かせてくれる心地良さ。
ちょっと他人に優しい気持ちになれるような気がする映画でした。
80年代のスピルバーグ(ファンタジー系のほう)の映画を観たあとに感じるものと似てるかも。
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