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ボブ・マーリー:ONE LOVEのyoshi44のレビュー・感想・評価

ボブ・マーリー:ONE LOVE(2024年製作の映画)
3.5
偉大なるボブ・マーリーの半生を、存命である彼の家族(妻と息子)の公認で映画化された本作。
そのパワフルでメッセージ性に富んだ楽曲は、たとえ彼を知らなくても必ず聞いたことがあるはず。

日本では政治的発言をするアーティストは何故だか疎まれるけれど、ボブの音楽は政治的メッセージそのものであり、それが力となり、聞く者の精神性を高めすらもする。
そして誰もが共感できる歌詞とリディムを融合させたことで、永遠の普遍性を得た。

これは持論だが、例えエンターテイナーであったとしても影響力のある者は時の権力者を監視し、それを言葉にするべきだ。
それでファンが離れるなら、そのファンはそれまでと切り捨てればいいだけ。
反対に、例えば吉本興業のように権力者と癒着する姿勢は非常に危険で、大衆を欺き、私欲に走ることがいともたやすくできてしまう。

コロナ禍の折、本来は“理不尽な権力に抗うためには死をも厭わない覚悟”を謳ったはずのレ・ミゼラブル「民衆の歌」を、日本の歌い手たちが“我慢して家にいよう”という意味合いで配信したおぞましい愚行を思い出す。
日本人は本当にコントロールしやすい大衆だと絶望した。

なんだか話が逸れてしまったけれど、ボブ・マーリーを語るとき、必ずその歴史的、政治的背景も合わせて語ることになる。それは避けられないと思う。
歌は力、自由は勝ち取るもの。
ボブはそれを音楽という楽曲の中に体現した。
老若男女が笑顔で楽しむことができる歌のなかに、力強いそのメッセージを込めたのだから。

短尺なので幼少期のエピソードをもっと入れる余裕があったのでは、と思うのと、主演のキングズリー・ベン=アディルは本人に似ていない。でも良い存在感だなぁと思ったら、『あの夜、マイアミで』でマルコムXを演じていた彼だった。
007ことラシャーナ・リンチはさすがの演技。彼女がいて本作が締まる。

挿入歌としての使い方もあまり上手くなくて少し残念ではあったけれど、“歌は力”であることを再認識することができた。

ところで、最近観る映画はちょいちょいブラッド・ピットが制作で絡んでる。本作も然り。
映画人としてそういうフェーズに来ているのかね。
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