鉄男フーテンの3Dあーてすと

ほかげの鉄男フーテンの3Dあーてすとのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
5.0
セットにまで作品の緊張感が宿ったような作品。

ガラスの煤けた感じや実際ある程度は燃えたような木材に襖、ぼろぼろの畳。
これらのセットが実際に火をつけて焦がしたのではないかという危うさを孕んでいて、戦後の生活の生々しい痛みにリアリティを与えるのに大きな力を発揮している。
(メイキングを見たわけではないので実際にある程度火を使ってるのかも)
MX4Dでもないのに煤けた臭いを感じそうなくらいに。

暗いシーンに浮き上がる人体のシルエット。多くはフチに青く鋭い光沢が強いコントラストで描かれていて高い緊張感と独特の美を感じる。
対して外から刺す夕日や蝋燭の灯りなど、オレンジの灯りに照らされたシーンは淡く描かれている印象。
そういった色やコントラストの処理や構図、カットの切り替え、時に危うさを感じる手ブレ表現も含めて脚本、撮影、編集も監督が行っているからこそ、多くを語らない物語からひしひしと感じさせる表現を貫けていると感じた。

多くを語らないとは書いたものの、本作はけっこう大事な事は最終的には登場人物が口にしている方と感じて、何処までを具体的に言葉にするか、表情や間で見るものが察するようにするか、とても判断が大変だったのではないかと感じた。(見ている最中は作品に惹き込まれていてそれどころではなかったが)

引き戸がガタガタいう音をはじめ、日本家屋の音も心に来る。
何処までが意図的なのかわからないけど。

亡くなってからの作品なのでどのように作られたのか把握していませんが、石川忠さんの曲も最高でした。

----------余談----------
タイトルロゴが出るシーンが、めちゃくちゃ凄い。
いやこれまじで、やられたー! まだこんな凄い演出あったかー!!
と。
いやそんなめちゃくちゃ映画見てるわけでもないから、もしかしたら何かのオマージュかも知れないし、似たものもあるかも知れないけど、シチュエーションも相まってめっちゃ来るタイトルロゴ表示のシーンでした。