鉄男フーテンの3Dあーてすと

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーの鉄男フーテンの3Dあーてすとのレビュー・感想・評価

4.2
TVシリーズのリメイク作品も1話目しか見ておらず、旧TVシリーズの再放送を小さい頃に見た記憶だけしか知らない状態で視聴。

それでも問題なくだいたいのキャラの立ち位置はわかる。
原作者を怒らせ(たらしい)、TVシリーズとの毛色の違う所を怒る人(がいるらしい)を持つこの劇場版でも、ある種の原作やお約束のもつ強いキャラクターの個性が活きていると感じた。
だからちゃんと作品を追ってこなかった自分でもわりと序盤で全人物の立ち位置を把握できた。

そもそも映画一本のプロットとしたら登場人物多過ぎるように見えるが、知らなくてもわかるようなある種の魅力的なお約束が機能しているからか、
はたまたこの一本の作品の中で人物の葛藤や変化よりもシチュエーションそのものにフォーカスが向いているからか、その点は気にならなかった。

日常を描く学園ものの中の少し長い1話と捉えられる感じだ。
だからこそ葛藤とその帰結というよりは、開示のような台詞がこの作品の人間ドラマの中では強いと感じた。

絵。というか、演出的なところで止めの背景が後の劇場アニメに比べるとそこまで描き込んではいないが故に筆跡から感じとる情景みたいなものがあって当時の技術よ! と思った。(調べたらTVシリーズのスタッフで作ったとあるのでその所以かもしれない)
また背景込みで動くシーンや、キャラクターの周囲をカメラが回るシーン、止め絵でレンズによる距離の変化とカメラ位置による距離の変化のズレを感じさせるような表現がおもしろかった。
手描きでそう見せている故の奇妙さというか、そういうものも、また背景もアニメーションするシーンの描き込みがなくても違和感のないように見せる演出とかもすげぇなと。
今なら3D使うなり何なり出来てしまうので当時の知恵が生んだ技よなぁと。

総じて絵のおもしろさがとても好きで、ゼロ年代以降、繰り返す日常系の作品が増えたのはこの作品の影響がやっと薄れた頃にこぞってみんな始めたのかなと思ったり。
中にはこの作品のオマージュであることを明確に示唆している演出よねアレと、本作を見ながら思った作品もあるほどに。

というわけでおもしろかった。

----------余談----------
肯定意見も否定意見も昔からネットでよく見たし、人からも聞いていたからもっとゴリゴリの押井守作品なのかと思ったけど、ノリや声優の演技はとてもTVシリーズのものを感じてそれも込みでおもしろかった。

この作品ずっと見たかったけど近所のレンタルビデオ屋に何故か無くて、持ってる作品もあったけど知らない作品も含んでた押井守のDVDBOXにも入ってなかったのでサブスクで見れて良かった。
めちゃくちゃお金に余裕あれば円盤も持っておきたい。