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ほかげのKOZOのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.3
ここのところ俳優としての活躍が目立つ塚本監督(最近だと『シン・仮面ライダー』の博士かな)の『野火』『斬、』に続く新作。
そして朝ドラと全く違う(観てないけど…)趣里の鬼気迫る演技。復員兵たちのトラウマ。
辛いけど観てよかった。

太平洋戦争後、夫と我が子を亡くし、闇市で焼け残った居酒屋で食事の提供と体を売ることでひっそりと暮らす主人公。そこに毎日のように盗んだであろう食べ物を持ち込んでくる孤児。そこに突然復員兵がやってきて…

『野火』では戦場の極限状態での人の醜さを、『斬、』では圧倒的な暴力に対し人を斬れない武士の危うさを、
そして今作では戦後の庶民のやるせなさを。

大森立嗣監督が塚本監督に負けずと役者で出演…と思ったらとても重要な役。あの『ゆきゆきて、神軍』を思い出す。キツい。

『野火』『斬、』でも観終わって感じたやるせなさ、虚しさ。闇市に鳴り響く銃声。また忘れられない一本が。

もうすぐ戦後80年、穏やかそうに見える日本からニュースで見るウクライナやガザの惨状。
大国のエゴ。戦争の大義とは。
「こんな時代だから」という言葉をずっと言い続けている気がするのは悲しいけれど、戦争の悲惨さを実感できるこういった作品をこれからも残していってほしい。
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