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ナポレオンのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ややこしい人だったんだろうなとは思っていたけれど、ここまで男らしさにとらわれた、弱さを認められない弱い男としてナポレオンが描かれていることにおもしろさがあった。ハンカチーフで涙を拭う姿や、犬と戯れあったり、バスタブで甘えたりするナポレオンはきっと優しい男で、ちぎったパンを兵士たちに手渡しで配る細かい描写からは、なぜ彼があれほど慕われていたのかがわかる。はじめての戦闘シーンでみせる恐怖の表情や、暴れ出す議会から逃げ出す姿、ジョセフィーンに「見てたでしょ?」って言われて一度否定しちゃうところとか、いちいち情けなくてとてもいい。

離婚のシーンが痛々しくて、当時はきっと後継をつくれない妻が国の不利益と捉えられていたのだろうけれど、子どもをつくることに執着しなかったら、あのふたりはずっと一緒にいれたのになと思う。けれどはじめての我が子を抱いて、またハンカチーフで涙を拭うナポレオンの姿を見ると、子どもがほしかったのだろうし、きっとジョセフィーンに母になってほしかったのだろうなと思う。

ひとりよがりの男を描く映画だから仕方がないのかもしれないけれど、もっとジョセフィーンの内面を知る描写があってもよかったのではとは思った。どこか屈折した感情をナポレオンに持ちながら、なぜ愛人をつくり、征服と執着を同時に抱くように彼との関係性を結んでいたのか、そこに立体感が足りなかった。もっと知りたいと思ったからそう感じたのかもしれないけれど。

合戦シーンは圧巻で、砲撃の迫力と威力にはどきどきさせられた。英国兵たちの方陣戦略にも説得力があって、軍を率いるものの視線を擬似体験するような描写がすばらしい。
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