英雄と呼ばれる一方で、悪魔と恐れられた男。
リドリー・スコット監督、ホアキン・フェニックス主演による伝記映画。
フランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトの姿を描く。
ナポレオンをフェニックス、妻・ジョゼフィーヌをヴァネッサ・カービーが演じているほか、タハール・ラヒム、リュディヴィーヌ・サニエ、マーク・ボナー等が登場。
物語は、クーデターを成功させてフランスの皇帝まで上り詰めたナポレオンと、妻となるジョゼフィーヌの姿が中心となるが、歴史に疎い私は、冒頭、予告編でも描かれていたフランス革命においてギロチンで処刑されたのがマリー・アントワネットだったことを初めて知った次第。
以降、ナポレオンがいかにして各地での戦いを制覇してきたかという軍事戦略や、そのアクションがメインになるかと思いきや、当時未亡人であったジョゼフィーヌに惹かれ結婚する過程や、その後、ジョゼフィーヌに翻弄される様子に結構な時間が割かれていたのは意外であり、少々拍子抜けした次第。
とは言うものの、最近『ハウス・オブ・グッチ』『最後の決闘裁判』と、実話ベースの作品が続き、映像派として名を馳せるスコット監督が、8,000人を超えるエキストラを擁してロケを行い、細部まで拘り抜かれた映像は、まさに一級品であり、先日観た邦画における映像技術ではトップレベルとなる山崎貴監督『ゴジラ-1.0』が霞んでしまうほど。
とりわけ、序盤にあるピラミッドのシーンは衝撃的であるとともに、終盤、前述のように歴史に疎い私でもその名を耳にしたことがあるワーテルローの戦いでは、当時の戦術を見事に可視化させており、その映像美と相まって圧巻の一言。
ナポレオンと聞くと、某焼酎の愛称である「下町のナポレオン」を真っ先に思い出してしまった私でも、尺の長さを感じることなく楽しむことができたと同時に、いくら英雄と崇められる人物でも、女性の前にはひれ伏すしかないことに安心感を覚えた一作。
この向こうに、我々の運命がある。
