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アイアン・スカイのodyssのレビュー・感想・評価

アイアン・スカイ(2012年製作の映画)
4.0
【フィンランドもドイツも枢軸国だった】

この映画、ナチのステレオタイプを存分に利用して遊びまくっているね。それだけじゃない。現在の地球を牛耳っているアメリカをはじめ、諸大国を皮肉たっぷりに描いているところが買いだ。

おおっ、ナチの究極の戦闘型大型宇宙船が「神々の黄昏」とは、しびれるねえ。おまけにワーグナーの音楽がたっぷりと使われている。マッドサイエンティストもいるし、いかにもといった旧式の歯車や機械が出てくるのもいい。何より、小型戦闘機が空飛ぶ円盤だとか、その空飛ぶ円盤を多数収納する空母がツェッペリンの飛行船型をしているとか、昔懐かしい意匠が満載じゃん。

しかしまた、ナチを迎え撃つ地球の国々も何だね。再選をめざす女性大統領のスローガンが”Yes, she can!”だとか(言うまでもなくオバマの"Yes, we can"のもじり)、平等路線の宣伝のために黒人飛行士を月に派遣するとか、北朝鮮だのロシア(旧ソ連)だと、資源をめぐる醜い争いだとか、宇宙平和条約の無視だとか、いろいろ生臭い人間やら話やらが出てくるぜえ。要するに、みな同じ穴のムジナなんだよな。

それにしても、この変な、いや、すばらしい映画を作ったのがドイツとオーストラリアとフィンランドって、どういう組み合わせなんだ!? ドイツについては、ようやくナチ贖罪じゃなくナチを喜劇的に扱う映画が作れるようになったのを言祝ぎたいけど。
フィンランドは、何だね、第二次世界大戦では枢軸国側だったから(ソ連の圧迫に苦しんでいたためらしい)、そのよしみで、ってのは勘ぐりすぎかな。
にしても、なんでオーストラリアが入っているのだ!? オーストリアじゃないぜ。もしかして白豪主義を捨てて久しいオーストラリアは本格的に脱欧米的価値観を目指している、つまり連合国に都合のいい戦後的価値観から抜け出そうとしているのだろうか・・・って、冗談にもならないかな。ははは。
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