ほんの数秒間の高校での授業のシーンでカメラに映らない教師が話しているのは「仮定法過去完了」の話である。
河辺市子の足から始まるオープニングと、視点をスイッチしていく回想が連なる構成には引き込まれる。
ただ、意図的になのか後半はそのトーンアンドマナーも崩壊していく。市子の主観が支配的になると捉えればそれはそれでありだけど、かなり演技も演出も直情的になっていくにつれて自分の心は離れてしまった。特に核心に触れる回想シーンから終盤はちょっと辛い。
映画を観た後に原作の舞台版のあらすじを読んだらかなり映画的に脚本自体をブラッシュアップしているんだということは感じだけど、それでもまだ演技手法が舞台的な印象を受けた。
そんな中でも若葉竜也が中田青渚と別れた後、原付を走らせるまでを捉えたワンショットはめちゃくちゃ気持ち良かった。映像の快感がある。あとは繊細なシーンになるとカーテンを上手く使っていたのも良い。狭い部屋をこちら側とあちら側で明確に分ける画面設計も良かった。
