こなつ

市子のこなつのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.8
市子が生まれながらに持った闇の大きさは計り知れない。

3年もの間一緒に住んでいて、そろそろ結婚しようかとプロポーズをした翌日、市子(杉咲花)が突然姿を消す。市子の恋人長谷川義則(若葉竜也)は、市子を必死で探していくうちに、次第に明らかになっていく市子の壮絶な過去と大きな秘密に向き合うことになる。彼女に関わってきた人々を通して幼少期からの彼女の生き様が次第に明らかになって行く。過去と現在が行き来し、微妙に絡んでいくのを一緒に映像で追いながら今の市子が見えてきた。

ある日、ニュースで流れる山中で発見された遺体。そのニュースが何を意味するのか、、刑事(宇野祥平)が市子を訪ねて来た。3年も一緒に住んでいながら市子の事を何も知らなかったことに呆然とする義則。市子の昔の友人や関係者からの話で彼女が話せなかった大きな秘密の意味を知る。抗えない自分の生い立ちに、生きて行くために彼女が選んできた道。それはあまりにも短絡的であり残酷であり、決して許されるものではなかった。

杉咲花も若葉竜也も抜群の演技力。ミステリアスな物語に引き込まれる。自分の生きる場所を探して最後まで罪を重ねて行く市子の姿が哀れで、平凡な幸せをただ望んでいただけの市子を救う手立てはなかったのかと考えずにはいられなかった。
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